腕の筋肉は日常生活で非常に重要で、物を持ち上げたり、運んだり、引いたり、押したりする際に欠かせない役割を果たします。
腕の筋肉を鍛えることは、日常生活の動作を楽にし、スポーツやトレーニングのパフォーマンスを向上させるために非常に重要です。
また、バランスの取れた体を作るためにも欠かせません。
腕は露出する機会も多く、体の部位の中で最も人目にさらす部分と言えます。
男性にとって鍛えられた腕の筋肉は、力強く男らしい印象を与えることができます。
女性にとっても引き締まった二の腕は、健康的で美しいボディラインを作り出すのに役立ちます。
腕の筋肉の基本情報
トレーニングを行う上では、上腕の「上腕二頭筋」・「上腕三頭筋」、前腕はまとめて「前腕筋群」の3つに分けてトレーニングを行うことが多いかと思います。
実際は他にも多くの筋肉で構成されています。
まずは上腕から
上腕とは肩から肘にかけての腕の部分を指し、上腕の筋肉は、肘関節や肩関節の運動に関与しています。
上腕の筋肉は、肘関節や肩関節の運動に関与しています。
上腕といえば「上腕二頭筋」、腕を曲げた時に盛り上がる力こぶを思い浮かべる方が多いかと思います。
実はその深層に「上腕筋」という筋肉も存在し、肘の屈曲に関わります。
また、前腕と肩の間に「烏口腕筋」という小さな筋肉も存在し、肩関節の内転などの動きを補助的にサポートします。
さらに二頭筋の対側(裏)に「上腕三頭筋」があり、肘を伸ばすときに働きます。
実は、上腕二頭筋より上腕三頭筋のほうが筋量は多く、上腕の筋肉の2/3程度を占めています。
腕全体の太さ・たくましさを出すためには非常に重要な筋肉となります。
続いて前腕になります。
前腕は肘から手首までの腕の部分を指し、20近い筋肉からなる「前腕筋群」が存在し、前腕の回転、手首、指を動かすために非常に重要な働きをします。
手や指先で細かい精密な作業を行えるのは、このいくつもの前腕筋群が協力して働いてくれているためです。
前腕筋群は大きく『前腕屈筋群』と『前腕伸筋群』に分けられ、主に手のひら側の前腕に屈筋群、手の甲側の前腕に伸筋群が存在します。
前腕の中で目立つ筋肉として、肘関節の屈曲に関与する「腕橈骨筋」という筋肉が前腕前面の外側(親指側)に存在します。
肘を曲げる動作に加え、前腕を内側に回す動作(前腕の回内)などにも関与しています。
上腕
上腕二頭筋
「上腕二頭筋」は、腕のなかでも特に目立つ部分である上腕前部に位置し、大きく分厚い筋肉でいわゆる「力こぶ」として知られています。
その名の通り、上腕二頭筋は「短頭」と「長頭」の2つの起始から成り立っています。
「短頭」は身体の内側に、「長頭」は身体の外側についている筋肉のことを指します。
上腕二頭筋の起始・停止
起始
長頭: 肩甲骨の関節上結節
短頭: 肩甲骨の烏口突起
停止
橈骨粗面と上腕二頭筋腱膜
上腕二頭筋は起始と停止が肩と肘の二つの関節をまたぐ「二関節筋」ということになります。
長頭は、肩関節腔内にある肩甲骨の関節上結節から起こり、上腕骨頭の上を横断します。
その後、上腕骨小結節の外側縁を滑車のように使い下方に向きを変え、結節間溝を下行します。
短頭は烏口突起から起こり、烏口腕筋の表面を走ります。
停止腱は肘関節をまたいで橈骨粗面につくほか、一部は腱膜として前腕内側の皮下にある前腕筋膜に癒合します。
この腱膜は前腕を回外する際に、二頭筋の収縮力を前腕筋膜に伝える作用があります。
役割
1. 肘関節の屈曲
上腕二頭筋は肘関節を屈曲させる主要な筋肉であり、腕を曲げる動作に大きく関与します。
2. 前腕の回外
手のひらを上に向ける(前腕回外)動作にも関与します。
3. 肩関節の屈曲
上腕二頭筋は肩関節の屈曲(腕を前方に持ち上げる)にも関与します。
上腕二頭筋の停止部である『橈骨』は前腕の回転時に動き、上腕二頭筋の収縮は前腕の回外に働きかけます。
つまり、上腕二頭筋は前腕を回外させた状態での肘関節の屈曲で最も力を発揮します。
特に、烏口突起を起始とし上腕の体側(内側)を走行する上腕二頭筋の短頭は、前腕を回外させた状態で強く作用します。
上腕二頭筋のトレーニングでは、前腕を回外させた状態で肘関節の屈曲を行うようにしましょう。
上腕筋
肘関節を曲げる筋肉には、上腕二頭筋の他にも「上腕筋」という筋肉があります。
上腕筋は上腕前部に位置する筋肉で、力こぶを作る筋肉として知られる上腕二頭筋の深層の肘に近い部分にある上腕前部の筋肉です。
上腕筋は上腕二頭筋の下(深層)に位置しているため、上腕筋を鍛えボリュームを増すことで上腕二頭筋を押し上げ、より太い腕を作り上げることがでるため、ぜひ鍛えておきたい部位です。
とはいえ、上腕二頭筋などをターゲットとした一般的な肘関節屈曲のトレーニングを行えば、上腕筋も同時に鍛えられるので、特別に上腕筋だけにターゲットを絞って鍛える必要はないでしょう。
上腕二頭筋の起始・停止
起始
上腕骨前面、内・外側の上腕筋間中隔、肘関節包前面
停止
尺骨粗面
役割: 肘関節の屈曲
前記したように、上腕二頭筋は停止部である『橈骨』が前腕の回転時に動く特性上、前腕回内時に肘屈曲筋としての作用が低下します。
上腕筋が停止する「尺骨」は前腕の回内・回外時ともにほとんど動かないため、前腕回内時に作用が低下する上腕二頭筋とは異なり、前腕の位置に影響を受けず、安定したパフォーマンスを発揮します。
肘関節の純粋な屈曲筋はこの上腕筋のみとなります。
烏口腕筋
「烏口腕筋」は、肩甲骨から上腕前面に向かって走行する細長い筋肉です。
上腕二頭筋の起始・停止
起始
肩甲骨の烏口突起
停止
上腕骨の内側中央部
役割
肩関節の内転と屈曲
メインとして単体で働くというより他の筋肉と協力し、その動きをサポートするインナーマッスルの役割を果たします。
上腕三頭筋
「上腕三頭筋」は、上腕後面全域に大きな筋腹を構成しており、「長頭」・「内側頭」・「外側頭」という3つの起始からなるため「三頭筋」と呼ばれます。
「外側頭」と「内側頭」は短頭と呼ばれることもあり、外側頭は主に肘を伸ばすときに作用し、内側頭はその補助をしています。
上腕の中で、まず目が行くのは力こぶである上腕二頭筋かも知れません。
しかし、実は上腕三頭筋のほうが筋量が多く、上腕の筋肉の2/3程度を占めています。
上腕三頭筋を鍛えることで、効率的に腕周りを大きくすることができるため、腕の太さ・たくましさを出すためには非常に重要な筋肉です。
また、上腕三頭筋のある上腕後面といえば、女性にとっては、たるみの気になる部位でもあります。
上腕三頭筋のトレーニングによって、たるんだ二の腕を引き締めることもできます。
引き締まった腕は、健康的で美しい印象を与えます。
上腕三頭筋の起始・停止
起始
長頭 : 肩甲骨関節下結節
外側頭 : 上腕骨近位の後外面
内側頭 : 上腕骨中部の後内面
停止
尺骨の肘頭
つまり、上腕三頭筋の中でも長頭は、起始と停止が肩と肘の二つの関節をまたぐ「二関節筋」ということになり、長頭は肘関節の伸展とともに肩の動きにも関与します。
短頭(外側頭・内側頭)は外側頭は主に肘関節の伸展に作用し、内側頭はその補助をするように働きます。
役割
1.肘関節の伸展
上腕三頭筋の主な働きとして、肘関節の伸展(肘を伸ばす動作)に関与します。
2. 肩関節の伸展
また、上腕三頭筋の長頭は肘の二つの関節をまたぐ「二関節筋」であり、肩関節の伸展(上腕を後ろに上げる動作)に対しても働きます。
3. 肩関節の内転
上腕三頭筋の長頭は、腕全体を内側に回す動作(内転)に対しても働きます。
前腕
前腕筋群
前腕は肘から手首までの腕の部分を指し、20近い筋肉からなる「前腕筋群」が存在し、手首の屈曲・伸展、外転・内転、回内・回外などの複雑な動きを可能にし、力強い握りこみや精密な手の動きを支えるために非常に重要な働きをします。
前腕筋群は大きく分けて『前腕屈筋群』と『前腕伸筋群』に分けられ、主に手のひら側の前腕に屈筋群、手の甲側の前腕に伸筋群が存在します。
前腕屈筋群は主に手根と手指の屈曲、前腕の回内に作用します。
前腕伸筋群は主に手根と手指の伸展、前腕の回外に作用します。
腕橈骨筋
「腕橈骨筋」は前腕前面の外側(親指側)に位置し、前腕の筋肉の中でも上腕二頭筋や上腕筋とともに、肘関節の屈曲に大きく関与します。
腕橈骨筋の起始・停止
起始
上腕骨の下部外側縁
停止
橈骨の茎状突起
役割
1.肘関節の屈曲
腕橈骨筋は手首(手関節)の動きには関与せず、主に上腕二頭筋、上腕筋とともに肘関節の屈曲動作に貢献します。
腕橈骨筋は前腕が中間位(回内と回外の中間)にある時に肘関節の屈曲筋として最も効果的に力を発揮します。
前腕の回内と回外の中間位とは手を前に出した状態で手を垂直に立てている(親指が上を向き、小指が下を向いている)状態となります。
腕橈骨筋のトレーニングでは、前腕を中間位の(手を垂直に立てた)状態で肘関節の屈曲を行うようにしましょう。
2.前腕の回内・回外
前腕の回内及び回外位から中間位までの回内・回外動作にも関与します。
腕(上腕・前腕)を鍛えるメリット
腕を鍛えることには多くの利点がありますが、その中から7つほど挙げてみます。
1.日常生活の機能向上
2.スポーツパフォーマンスの向上
3.基礎代謝の向上
4.見た目の改善(ボディメイク)
5.自信の向上
6.健康維持
7.むくみ・冷え性の改善
1. 日常生活の機能向上
腕の力は日常生活において非常に重要です。
腕の筋力を強化することで、日常の活動(例えば、物を持ち上げる、押す、引く)の大きな助けとなります。
また、前腕の筋肉は、手や指の動きを制御し、握力を向上させます。
前腕を鍛えることで、物をしっかりと握る力が増します。
2. スポーツパフォーマンスの向上
腕の筋力の増加により、スポーツやトレーニングでの全般的なパフォーマンスが向上します。
また、他の部位にある筋肉の負荷を軽減し、怪我の予防も期待できます。
3. 基礎代謝の向上
筋肉量が増えると、基礎代謝が上がり、太りにくく痩せやすい体質になります。
4. 見た目の改善(ボディメイク)
太くてたくましい腕は、力強い印象を与えます。
トレーニングの方法によっては、腕の引き締めにも効果的であり、二の腕のたるみを改善するのにも効果的です。
特に、腕はよく見られる部分なので、鍛えると見た目の印象が大きく変わります。
5. 自信の向上
見た目が引き締まったり、筋肉が発達することで、自分に自信が持てるようになります。
また、目標を達成することで精神的な満足感も得られます。
6.健康維持
筋力トレーニングは骨密度を高め、骨折や骨粗しょう症のリスクを減少させる効果もあります。
また、一部の研究では、握力の低下が認知症のリスクを高める可能性があると報告されています。
これは、握力が神経細胞の健康や脳の血流に関連しているため、握力の低下が脳の機能低下を示す指標となる可能性があるからといわれています。
7.むくみ・冷え性の改善
四肢の筋肉を鍛えることで、血液やリンパの流れが良くなり、むくみや冷え性の改善にもつながります。
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