仰向けに寝た姿勢で肘の曲げ伸ばしを行い、上腕三頭筋を集中的に鍛える種目
上腕三頭筋を鍛えるアイソレーション種目(単関節運動)の中でも、比較的バランスよく上腕三頭筋を刺激できるといわれるのがライイング・トライセプス・エクステンション です。
今回は、ライイング・トライセプス・エクステンションの効果・正しいやり方・注意点・バリエーション を整理してまとめていきます。
ライイング・トライセプス・エクステンション (スカルクラッシャー)
ライイング・トライセプス・エクステンションは、ベンチに仰向けになり、ダンベルやEZバーを使って行う上腕三頭筋のアイソレーション種目です。
動作は、肘を曲げて額の方向へウエイトを下ろし、再び肘を伸ばして持ち上げるというシンプルなものです。

正式名称:ライイング・トライセプス・エクステンション
通称:スカルクラッシャー(頭蓋骨割り)
通称名が少し物騒ですが、上腕三頭筋の定番トレーニングの一つです。
ライイング・トライセプス・エクステンションは、もしフォームを崩したりバーベルを支えきれなくなると、重りがそのまま頭に落ちてしまう危険性があります。
その危険性を揶揄して「スカルクラッシャー(頭蓋骨クラッシャー)」という俗称で呼ばれるようになりました。

「スカルクラッシャー」という通称名は、ユーモラスでありながら警告的な意味も含まれています。
実際の注意点としては、重りを下ろす位置は「額」よりも少し頭頂寄りにすると、より安全に行うことができます。
まず、初心者は重量を軽めにして、動作を安定させることが優先事項となります。
危険な印象のある名前ですが、正しい手順とフォームを守って行えば安全で効果的な種目です。
なお、正式名称はライイング・トライセプス・エクステンションなのですが、やや名称が長いため本ページでは「スカルクラッシャー」という呼び方で統一します。
スカルクラッシャーで鍛えられる部位
上腕三頭筋
スカルクラッシャーでは、上腕三頭筋の「長頭・外側頭・内側頭」を比較的バランスよく刺激できるといわれています。

腕を上に上げるオーバーヘッド系(フレンチプレス)と、腕を下げて体幹に添わせて行う種目(キックバックやプッシュダウン)の中間的なポジションで肘の曲げ伸ばしを行うため、肩と肘の両方の関節をまたぐ「二関節筋」である長頭に程よいストレッチが加わります。
結果、三頭筋の長頭・外側頭・内側頭を比較的バランスよく刺激することができます。

ストレッチポジションでの上腕三頭筋の長頭(イメージ)
スカルクラッシャーのやり方
道具の選択
スカルクラッシャーは、以下のような器具を使って行うことができます。
道具 | 特徴 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
ダンベル(両手持ち) | 1つのダンベルを両手で保持 | 安定感があり初心者向け/自宅トレーニングにも取り入れやすい | ダンベルが頭に干渉しやすい |
ダンベル(片手ずつ) | 両手に1つずつ持って同時に実施 | 自由度が高く手首や肘への負担も調整しやすい/可動域を広くとれる | バランスを取るのがやや難しく、不安定になりやすい |
バーベル | 両手でバーを保持 | 高重量設定が可能 | 手首や肘に負担がかかりやすい/ジムによっては20kg以下の設定ができない場合もある |
EZバー | バーベルの変形タイプ | 手首を自然な角度で保持でき関節への負担が少ない/フォームが安定しやすい | バーベルより扱える重量が限られる |
ケーブル | ロープ・バー・グリップなどアタッチメントが豊富 | 常に張力がかかり負荷が抜けにくい/追い込みにも有効 | 設備が必要なため自宅では難しい (ジム環境が必要) |
その他 (ケトルベル・プレート・チューブなど) | 家トレや変化をつけたい時に活用 | 工夫次第で手軽に実施可能 | 可動域が制限される場合がある |
実際には、EZバー もしくは ダンベル で行われることが多い種目です。
今回は自宅トレーニングにも取り入れやすいように、ダンベルを使った方法を中心に解説します。
セットアップ(ダンベル使用の場合)
- 両手でダンベルを持つ
ダンベルの持ち方
1. ダンベル1つを両手で持つ方法

- やり方
1つのダンベルを縦にして両手で支え、胸の上に構える。
手を重ねて両手の親指と人差し指の間にダンベルのグリップ部をはさむように、ダンベルのプレート部分をしっかりと手のひらで支える。 - 特徴
両手で支えるため安定感があり初心者向き。 - 注意点
片腕に力が偏らないよう均等に押す。
ダンベルが頭に干渉しやすいので注意。
滑ってうっかりダンベルを落とさないように、しっかりと保持する。
2. ダンベルを両手に1つずつ持つ方法

- やり方
それぞれの手でダンベルのグリップ部を握り、同時に上下させる。 - 特徴
可動域を大きくとりやすい。
両腕を均等に鍛えやすい。
両腕のバランスの差も確認できる。
グリップをしっかり握れる安心感もある。 - 注意点
左右で動きがズレやすく、不安定となりやすい。
コントロールが難しい場合は、左右のダンベルを揃えて密着させると安定しやすい。
- フラットベンチに仰向けに寝て、ダンベルを胸の上に構える。
- 肘を伸ばした状態で腕をやや狭めに構え、あごから顔の上付近にダンベルをセットする。
すこし腕に角度をつけることでダンベルの場合構えやすく、腕を伸ばした状態でも上腕三頭筋に負荷がかかった状態となります。

実施
- 息を吸いながら肘を曲げ、ダンベルを 額の方へ ゆっくり下ろす。
安全性を重視する場合は、ウエイトを下ろす位置を「額」よりも「やや頭頂寄り」に調整することで、動作中に力尽きた際などにも頭部への落下するリスクを軽減できます。 - 息を吐きながら、反動を使わずに肘を伸ばし、元の位置に戻す。

回数・セットの目安
筋肥大目的
→ 8〜12回×3セット
引き締め・シェイプアップ目的
→ 12〜15回×3セット(軽めの重量)
最初は軽めの重量から始め、余裕が出てきたら、徐々に重量を増やしていきましょう。
常に「正しいフォームを維持できる重量」を選び、無理なく続けることが大切です。
スカルクラッシャーの注意点・コツ
バーベル・EZバー使用の場合
1.手幅は肩幅よりやや狭めに設定する
2.手首はまっすぐ(巻き込まない・反らさない)
共通の注意点
3.肘を開きすぎない
4.反動を使わない
5.下ろす動作(ネガティブ)を大切にする
6.ウエイトを下ろす位置を安定させる
7.適切な重量設定で行う
8.呼吸の調整(下ろすときに吸う・持ち上げるときに吐く)
1.手幅は肩幅よりやや狭めに設定する(バーベル・EZバー使用の場合)
バーベルやEZバーを使う場合、手幅は肩幅より少し狭めに握りましょう。
狭めに握ることで、上腕三頭筋に効きやすくなります。

2.手首はまっすぐ(巻き込まない・反らさない)(バーベル・EZバー使用の場合)
手首を巻き込んだり反らしたりせず、できるだけ真っ直ぐに固定しましょう。
手首の負担を軽減し、安全に動作できます。

3.肘を開きすぎない

スカルクラッシャーで肘を開きすぎると起きるデメリット
- フォームが崩れやすい
- 三頭筋に効かせにくくなる (肩や胸の関与が増える)
- 手首・肩・肘に負担がかかりやすい
動作中は肘を肩幅程度に寄せて、外に開かないようにしましょう。
肘が外に開くと肩関節の動きが加わり、肩や胸の関与が増えてしまいます。
その結果、上腕三頭筋への負荷が逃げ、軌道もブレやすくなります。
4.反動を使わない
重量が重たくなると、つい反動や勢いで持ち上げてしまいがちです。
反動を使うと上腕三頭筋への刺激が逃げてしまうため、常にコントロールされた動作を意識しましょう。
上腕三頭筋への刺激が最大化され、ケガの予防にもつながります。
5.下ろす動作(ネガティブ)を大切にする
スカルクラッシャーでは、特に「下ろす局面(ネガティブ動作)」で三頭筋に強い刺激が入ります。
重力に任せて一気に下ろすのではなく、筋肉でブレーキをかけるようにゆっくり下ろすことを意識しましょう。
イメージとしては、2〜3秒かけるつもりでゆっくり下ろすようにしましょう。
6.ウエイトを下ろす位置を安定させる
スカルクラッシャーでは、肘をできるだけ固定し、肘関節の曲げ伸ばしだけで動作するのが基本です。

しかし、スカルクラッシャーでは途中で力尽きてしまった場合、額にウエイトが落ちてくることになります。
まさにスカルクラッシャー(頭蓋骨割り)です。

また、ダンベルで施行する場合は縦持ちにしたダンベルが頭に接触してしまい、可動域が極端に狭くなってしまいます。

安全性を重視する場合は、肘は少し動いてしまいますが、ウエイトを下ろす位置を「額」よりも「やや頭頂寄り」に調整することで、動作中に力尽きた際などにも頭部へ落下するリスクを軽減できます。
ダンベル使用の場合も軌道を反らすことでダンベルが頭部へ干渉するのを防ぐことができ、可動域をしっかり確保することができます。
ただし、この方法は可動域を広げすぎると肩に負担がかかるので、無理のない範囲で行いましょう。

7.適切な重量設定で行う
重すぎる重量はフォーム崩れやケガの原因になります。
また、スカルクラッシャーは顔の真上で動作を行うため、無理な重量の使用は思わぬ事故にもつながりかねません。
反動を使わずに最後までコントロールできる重さに設定しましょう。
特に初心者は、軽めの重量から徐々に慣れていきましょう。
8.呼吸の調整
動作に合わせて呼吸を行うことで、力を発揮しやすくなり安全性も高まります。
基本は「下ろすときに吸う・持ち上げるときに吐く」ようにしましょう。
また、重い重量を扱う際には、息を止めて腹圧を高める「バルサルバ法(バルサルバ・テクニック)」という呼吸法もあります。
より強く体幹を安定させやすくなりますが、血圧も上がりやすくなるため極力呼吸を止めない方法で行いましょう。
まとめ
スカルクラッシャーは、上腕三頭筋をバランスよく刺激できる定番トレーニングです。
その名前や動作からも、少し危険なトレーニングに見えるかもしれませんが、正しいフォームと適切な重量で行えば初心者でも安全に取り組めます。
初心者の方は軽めの重量から始め、フォームの安定を第一に取り組み、慣れてきたら徐々に負荷を増やしていきましょう。
腕を太くしたい方はもちろん、二の腕を引き締めたい方にもおすすめですので、ぜひトレーニングに取り入れてみてください。
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