前傾姿勢で肘の曲げ伸ばしを行い、上腕三頭筋を集中的に鍛えるアイソレーション種目
ダンベルキックバック (トライセプスキックバック) は、上腕三頭筋のアイソレーション種目の中でも強い収縮感を得やすい種目です。
今回は、ダンベルキックバックの効果・正しいやり方・注意点・バリエーション を整理して詳しくまとめていきます。
ダンベルキックバック (トライセプスキックバック)
ダンベルキックバックは、上体を前傾させ、肘を体の横に固定したまま腕を後方に伸ばすトレーニングです。
上腕三頭筋を集中的に鍛えるアイソレーション種目(単関節運動)の一つです。

この種目の特徴は、肘を伸ばしたときに負荷が最大化するため、強い収縮感を得やすいことです。
一方で、肘を曲げた位置(ストレッチ側)では負荷が抜けやすいというデメリットもあります。
ダンベルキックバックで鍛えられる部位
上腕三頭筋
※上腕三頭筋の中でも、特に「外側頭・内側頭」に刺激が加わりやすい種目となります。

肘を体の横に固定した状態での肘関節の曲げ伸ばしは、肩と肘の両方の関節をまたぐ「二関節筋」である長頭が短縮位となり活動が抑えられます。

ストレッチポジションでの上腕三頭筋の長頭(イメージ)
その結果、上腕三頭筋全体に刺激が入るものの、外側頭や内側頭が相対的に使われやすくなる傾向にあります。
ダンベルキックバックのやり方
準備するもの
- トレーニングベンチ
- ダンベル(無理なくコントロールできる重さ)
セットアップ
- ベンチに同じ側の手と膝を乗せて体を支える
(例:右手でダンベルを持つなら、左手・左膝をベンチに置く) - 上体を床とほぼ平行になるように前傾し、背筋をまっすぐ保つ
- ダンベルを握った腕を引き上げ、肘を体幹と同じ高さかやや上に固定する
- 前腕は自然に下げ、肘から先を動かす準備をする

動作
- 息を吐きながら肘を支点にして、前腕を後方へ肘を伸ばし切るまで上げる
ダンベルを後ろへ蹴り出すイメージ(キックバック)で、上腕は固定したまま動かさず、肘から先だけを動かすのがポイント
最高点で上腕三頭筋の収縮をしっかり感じましょう(フィニッシュポジション)
可能であれば、肘が伸び切ったところで一瞬(1秒程度)体勢をキープするとより効果的

- 息を吸いながら、ゆっくりと上げたときと同じ軌道でスタートポジションに戻す
回数・セットの目安(左右それぞれ)
最初は軽めの重量から始め、余裕が出てきたら、徐々に重量を増やしていきましょう。
筋肥大目的
→ 8〜12回×3セット(やや重めの重量)
引き締め・シェイプアップ目的
→ 12〜15回×3セット(軽めの重量)
いずれの場合も「正しいフォームを維持できる重量」を選ぶことが大切です。
ダンベルキックバックの注意点・コツ
1. 上体を床とほぼ平行になるように前傾姿勢を作る
2. 腰をまっすぐ保つ(反らさない・丸めない)
3. 肘の位置を動かさない・脇を開かない
4. 肩をすくませない
5. フィニッシュで収縮を意識する(可能であれば1秒程度停止させる)
6. 下ろす動作(ネガティブ)を大切にする
7. 反動を使わない
8. 適切な重量設定で行う
9. 呼吸の調整(下ろすときに吸う・持ち上げるときに吐く)
1. 上体を床とほぼ平行になるように前傾姿勢を作る
上体が起きてしまうと、収縮ポジションで十分に負荷をかけることができません。
無理に負荷をかけようとすると肘を大きく後ろに引いた状態で動作を行わなければならないため、肩を痛めるリスクが高まります。
上体を床とほぼ平行になるように前傾し、肘は腰の横に固定しましょう。
ベンチに置く手をやや前方につくと、自然に前傾姿勢を作りやすくなります。

2. 腰をまっすぐ保つ(反らさない・丸めない)

腰や背中が反ったり丸まったりすると体幹が不安定になり、肘の位置がブレやすくなります。
その結果、腕にかかる重力の方向がずれ、三頭筋に効率よく負荷を与えられません。
また、安全面でも注意が必要です。
腰を反りすぎると腰椎に負担がかかり、逆に丸めすぎても不安定になりケガのリスクが高まります。
軽い重量のうちは大きな問題になりにくいのですが、フォームが崩れたまま続けると腰を痛める可能性があります。
腰は「反らさず・丸めず・真っすぐ」を意識し、体幹を安定させながら動作しましょう。
3. 肘の位置を動かさない・脇を開かない
動作中は、肘を体幹と同じ高さかやや上で固定し、肘から先だけを動かすようにしましょう。
肘が下がると収縮時の負荷が弱まり、十分に三頭筋に効かなくなります。
さらに、肘が外に開いたり前後に動いたりすると肩関節の動きが加わり、上腕三頭筋への刺激が逃げてしまいます。
常に「肘を腰の横に固定」「動かすのは肘関節だけ」を意識しましょう。


4. 肩をすくませない

動作中に肩をすくめると、僧帽筋や肩周りの筋肉に負荷が分散し、本来ターゲットにすべき上腕三頭筋に効果的に効かせることが難しくなります。
肩は地面方向ではなく「腰の方へ下げる」意識で行うと、腕の動きが安定し、三頭筋にしっかり刺激を届けられます。
5. フィニッシュで収縮を意識する(可能であれば1秒程度停止させる)
ダンベルキックバックは、肘を伸ばしたフィニッシュポジションで負荷が最大化するため、上腕三頭筋のアイソレーション種目の中でも強い収縮感を得やすい種目となります。

この特徴を生かすためにも、この種目では特にフィニッシュポジションでの筋肉の収縮意識を重要視しましょう。
可能であればフィニッシュポジションで1秒程度停止すると、さらに効果的に三頭筋に刺激を与えられます。
6.下ろす動作(ネガティブ)を大切にする
「下ろす局面(ネガティブ動作)」でも三頭筋には強い刺激が入ります。
重力に任せて一気に下ろすのではなく、筋肉でブレーキをかけるようにゆっくりと下ろしましょう。
ゆっくり落とすことで、反動の使用を防ぐこともできます。
7. 反動を使わない
重量が重たくなると、つい反動をつけて持ち上げてしまいがちです。
特にダンベルキックバックは、ダンベルを振り子のように使うことで反動を使いやすい種目です。
反動を使うと上腕三頭筋への刺激が逃げてしまうため、常にコントロールした動作を意識しましょう。
肘から先だけを動かす意識で、上腕三頭筋にしっかり負荷をかけましょう。
8. 適切な重量設定で行う
重すぎる重量はフォームが崩れやすく、ケガの原因にもなります。
反動を使わずに最後までコントロールできる重さに設定しましょう。
特に初心者は軽めの重量から始め、徐々に慣れていくと安全かつ効果的にトレーニングできます。
9. 呼吸の調整(下ろすときに吸う・持ち上げるときに吐く)
動作に合わせて呼吸を行うことで、力を発揮しやすくなり安全性も高まります。
基本は「下ろすときに吸う・持ち上げるときに吐く」ことを意識しましょう。
また、重い重量を扱う場合は、息を止めて腹圧を高める「バルサルバ法(バルサルバ・テクニック)」という呼吸法もあります。
体幹を安定させやすくなりますが、血圧が上がりやすいため初心者は無理に行わず、自然な呼吸を心がけましょう。
補足事項
ダンベルキックバック(両腕同時)
ダンベルキックバックは、片手ずつ行うのが基本ですが、両手同時に行うこともできます。
方法
両手にダンベルを持ち、腰を支点に上体を前傾させ、両腕を同時に後方へ伸ばします。

メリット
- 時間効率がよい
両手同時に行うことで、トレーニング時間を短縮できます。
忙しい方やサーキットトレーニングの一環として取り入れるのに適しています。
デメリット
- フォーム維持が難しい
両手で行うと上体を安定させる支点がなくなり、腰や背中が丸まりやすくなります。
前傾姿勢を保つこと自体難しく、体幹がブレやすくなりフォーム維持に関する難易度が上がります。 - 反動を使いやすい
体幹が固定されていないため上体がブレやすく、反動も利用しやすくなります。 - 負荷が分散しやすい
フォームの崩れや反動により、上腕三頭筋への負荷が分散しやすくなります。 - 腰への負担が大きい
正しいフォームを保つためにはしっかりとした前傾姿勢が必要となるため腰への負担が大きくなります。
これらのデメリットを軽減するために、インクラインベンチやフラットベンチに腹這いになって行う方法もあります。
体幹の安定性が増し、フォームを維持しやすくなります。

ダンベルキックバックの大きな特徴は、収縮ポジションでの強い収縮感を得やすいところです。
両手同時のキックバックは、片手ずつ行うキックバックに比べて、フィニッシュポジションでの筋肉の収縮意識が疎かになりやすくなります。
両手同時のキックバックは時短にはなりますが、筋肉への効かせ方が難しくなる傾向があります。
基本的には、片手ずつ丁寧に行う方法をおすすめします。
まとめ
ダンベルキックバック (トライセプスキックバック) は、上腕三頭筋のアイソレーション種目の中でも強い収縮感を得やすい種目です。
反面、ストレッチポジションでの負荷が弱く、効果的に負荷がかかる範囲がやや狭いという弱点もあります。
そこで、フレンチプレスやスカルクラッシャーのようなストレッチポジションで強い負荷を得られる種目と組み合わせて行うことで、お互いの不足している部分を補うことができます。
ダンベルキックバックだけに固執せず、他のトライセプスエクステンションと組み合わせていくと、効率的に上腕三頭筋を鍛えることができます。
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