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上腕三頭筋トレーニングガイド

ダンベルトレーニング

~上腕三頭筋を鍛える代表的な種目とその効果~

上腕三頭筋は、腕の後ろ側(上腕の後面)に位置し、上腕の筋肉の中でも大きな割合を占める筋肉です。
その位置と役割から、二の腕のたるみを引き締めたい方はもちろん、ベンチプレスなどプレス種目の重量を伸ばしたい方にとっても重要な筋肉です。

では、上腕三頭筋のトレーニングにはどんな種目があるのでしょうか?
今回は、上腕三頭筋を鍛える代表的なトレーニングを大まかに解説していきます。

上腕三頭筋の構造

まず基礎知識として、上腕三頭筋の構造を簡単に確認しておきましょう。

上腕三頭筋」は、腕の後ろ側(上腕後面)に広がる大きな筋肉で、長頭・外側頭・内側頭という3つの部位から構成されています。
この3つの「頭(かしら)」を持つため「三頭筋」と呼ばれます。

上腕三頭筋の起始・停止

起始(筋肉が始まる部分)

 長頭 : 肩甲骨の関節下結節
 外側頭 : 上腕骨の近位(肩に近い部分)の後ろ外側
 内側頭 : 上腕骨の中部(肘に近い部分)の後ろ内側

停止(筋肉が付着する部分)

 尺骨の肘頭(肘の先端部分)

上腕三頭筋の中でも長頭」は、肩関節と肘関節をまたぐ「二関節筋であり、肘を伸ばすだけでなく、肩関節の動き、具体的には肘を後ろに引いたり腕を体側に寄せたりする動きにも関与します。
一方、外側頭」と「内側頭」は、肘関節のみをまたぐ「単関節筋であり、どちらも肘の伸展に作用します。

上腕三頭筋の役割

  1. 肘関節の伸展
    上腕三頭筋の主な働きは、肘関節の伸展(肘を伸ばす動作)です。
    プレス(プッシュ)系のトレーニングでは欠かせない役割を果たします。
  2. 肩関節の伸展
    長頭は「二関節筋」であり、肘の動きに加えて肩関節の伸展(腕を後方に引く動き)にも関与します。
  3. 肩関節の内転
    長頭は、腕を体の側面に引き寄せる(内転動作)にも関与します。

トライセプスエクステンションとは

トライセプスエクステンション」とは、肘の曲げ伸ばし動作だけで上腕三頭筋に負荷を集中させる「アイソレーション種目の総称です。

トライセプスエクステンションはダンベル・バーベル・ケーブル・マシンなどを用いた多くのバリエーションがあり、肩関節の角度によっても刺激の入り方が変わります。

三頭筋を効率的にバランスよく鍛えるためにも、またトレーニングのマンネリ化を防ぐためにも、こうしたバリエーションを取り入れることは非常に重要です。

トライセプスエクステンションの代表的な種目

トライセプスエクステンションは以下のようなバリエーションがあります。

1. オーバーヘッド系(頭上で行うタイプ)

2. ベントオーバー系(体を前傾させて行うタイプ

3. ライイング系(仰向けで行うタイプ)

4. ケーブル系(1~3の動作だけでなくプッシュダウン動作も可能)

5. マシン系

1.オーバーヘッド系(頭上で行うタイプ)

オーバーヘッド・トライセプスエクステンション (フレンチプレス)

ダンベルやEZバーを頭上に持ち上げてから(もしくはケーブルを用いて頭上で)肘を曲げ伸ばしする動作で、通称「フレンチプレス」と呼ばれることもあります。
なお、一部では「フレンチプレス」という言葉をライイング・トライセプスエクステンション(スカルクラッシャー)まで含めて使うこともありますが、通常は オーバーヘッド系の種目を指す名称 として使われます。

特徴
腕を頭上にあげて肘の曲げ伸ばしを行うため、二関節筋である長頭に強いストレッチが加わります。
その結果、特に長頭強い刺激が加わる傾向にあります。

2.ベントオーバー系(体を前傾させて行うタイプ)

ダンベル・キックバック(ダンベル・トライセプスキックバック)

上体を前傾させ、肘を体の横に固定したまま腕を後方に伸ばす種目です。

特徴
肘を伸ばしきった「収縮ポジション」で最も負荷が強くかかるため、強い収縮感を得やすくなります。
一方、可動域がやや狭いというデメリットもあります。
このポジションでの肘関節の曲げ伸ばしは、長頭が短縮位となり活動が抑えられます。
その結果、外側頭内側頭が相対的に使われやすくなる傾向にあります。

3.ライイング系(仰向けで行うタイプ)

ライイング・トライセプスエクステンション (スカルクラッシャー)

ベンチに仰向けになり、ウエイトを額のあたりまで下ろしてから肘を伸ばす動作。
通称「スカルクラッシャー」とも呼ばれます。

特徴
腕を前に出すオーバーヘッド系(フレンチプレス)と、腕を下げる(体幹に添わせる)キックバックやプッシュダウンの中間的なポジションで肘の曲げ伸ばしを行うため、三頭筋の長頭・外側頭・内側頭を比較的バランスよく刺激することができます

4.ケーブル系

ケーブル・トライセプスエクステンション

ケーブルマシンを利用して行うため、基本的にはジムで取り組む種目です。
(自宅ではトレーニングチューブで代用するのが現実的です。)
ケーブルは動作中に常に張力がかかるため「負荷が抜けにくい」という特徴があり、最後の追い込み種目としてもよく使われます。
立位・座位・前傾・仰向け・オーバーヘッドなど豊富なバリエーションがあり、グリップ(ロープ・ストレートバー・Vバーなど)を変えることもできます。

バリエーションの一例

ケーブルトライセプス・プッシュダウン(プレスダウン)

上方向へかかる張力(負荷)を下へ押し下げる「プッシュダウンプレスダウン)」はケーブルならではの代表的な種目です。

特徴
上腕を下ろした状態(体幹に近い位置)で肘関節の曲げ伸ばしを行うため、長頭が短縮位となり活動が抑えられる傾向があります。
その結果、外側頭内側頭が相対的に使われやすくなります
フォームが安定しやすく、初心者にも取り入れやすい種目です。


オーバーヘッド・ケーブルエクステンション

ケーブルを頭上で引っ張って肘を伸ばす動作。

特徴
ケーブルを使うことで動作中に常に負荷がかかり、可動域全体で三頭筋に刺激を与えられる。
フレンチプレスと同様に、特に長頭に強いストレッチと刺激が加わる

5.マシン系

マシン・トライセプスエクステンション

専用マシンを使って行うタイプ。
軌道が固定されているためフォームが安定しやすく、ケガのリスクを抑えながら効率的に三頭筋を鍛えられます。


特徴
重量設定が容易。
高重量でも安全に扱いやすい。
初心者~上級者まで幅広く活用できる。
基本的にはジムでの利用が前提。(自宅に導入するにはハードルが高い)

少し気になる疑問

トライセプスエクステンションは、前腕の回旋(手のひらの向き)によって効果が変わるのか?

アームカールでは、前腕を回外(手のひらを上向き)させなければ、上腕二頭筋に効果的に刺激が加わらないという特性があることは以前解説しました。
では、『三頭筋のトレーニングであるトライセプスエクステンションでも、手の向きによって効果が変わるのではないか?』という疑問が湧くのは、自然なことではないでしょうか。

前腕の回旋

前腕の回旋」とは、前腕(ひじから手首までの部分)をひねる動きのことを指します。

回内 手のひらを下に向ける動き。 → 「Pronation(プロネーション)」とも呼びます。

回外 手のひらを上に向ける動き。 → 「Supination(スピネーション)」とも呼びます。

結論から言えば、トライセプスエクステンションにおいて、前腕の回旋(手のひらの向き)による上腕三頭筋そのものへの影響は限定的(ほとんどない)と言えます。

理由は、上腕三頭筋の停止部は「尺骨の肘頭」であり、尺骨は前腕の回内・回外運動にほとんど関与しないためです。
これに対し、「橈骨」に付着する上腕二頭筋は、前腕回旋(回外・回内)の影響を強く受けます。

ただし、実際のトレーニング動作では、グリップの持ち方によって力の伝達効率や手首への負担が変化し、その結果として上腕三頭筋の筋活動にもわずかな違いが生じるという可能性はあります。

つまり、トライセプスエクステンションでは、ダンベルのように自由度の高い器具や、アタッチメントが豊富なケーブル種目の場合、「手のひらの向き及びグリップの選び方は、手首に負担が少なく力を出しやすい握り方を選べば良い」ということになります。
上腕三頭筋は前腕の回旋による影響をほとんど受けないため、上腕二頭筋のトレーニングのように「回外しなければならない」といった制約はありません

トライセプスエクステンションのようなアイソレーション種目以外にも、以下のコンパウンド(複数の関節と筋肉を同時に使う)種目は上腕三頭筋への刺激が強い傾向にあります。

ウエイトトレーニング

ウエイトトレーニングでは、ベンチプレス・ショルダープレスなどの主にプレス系種目で上腕三頭筋が使われます。

上腕三頭筋にも刺激が加わるウエイトトレーニングの一例

ナローベンチプレス

通常のベンチプレスより狭い手幅で行うことで、大胸筋の関与が減り、上腕三頭筋への負荷が大きくなります。
高重量を扱えるため、三頭筋の筋力アップに効果的な種目です。

ショルダープレス

三角筋(特に前~中部)がメインで働きますが、押し出す局面で上腕三頭筋も強く関与します。
プレス系種目を行うだけでも、三頭筋の基礎的な筋力を底上げできます。

自重トレーニング

自重では、プッシュアップ(腕立て伏せ)やディップスなどのプッシュ系種目で上腕三頭筋が使われます。

上腕三頭筋にも刺激が加わる自重トレーニングの一例

トライセプス・ディップス

ベンチ台など安定した台の縁に両手を置き、体を支えながら肘を曲げ伸ばしする種目です
上腕三頭筋だけでなく、三角筋前部や大胸筋下部も同時に鍛えられます。
自宅でもベンチや椅子があれば簡単にできるため、初心者にも馴染みやすい種目です。
ただし、肩関節に無理な負荷がかかりやすい傾向があるので、各々の柔軟性を踏まえた無理のない可動域で行いましょう。
正しいフォームを意識すれば、三頭筋強化に非常に有効な種目です。

ナロープッシュアップ

手を肩幅より狭くして行う腕立て伏せです。
器具不要で自宅でも取り組みやすく、体幹も同時に鍛えられます。
ポイントは、肘を体に近づける意識で動作することで、三頭筋へ刺激が入りやすくなります。
腰が反らないように、まっすぐ体幹を維持しましょう。

初心者におすすめの上腕三頭筋トレーニング

個人的にお勧めしたい「初心者が取り組むべき種目3選」としては、以下の種目を提示します。
初心者でも無理なく始められるうえ、効率よく三頭筋を鍛えることができます。

  1. ナロープッシュアップ
    器具不要(自重トレーニング)で自宅でも可能。
    体幹も同時に鍛えられる。

  2. オーバーヘッド・トライセプスエクステンション(フレンチプレス)
    ストレッチ感が強く、特に長頭をしっかり刺激できる。
    ダンベルがあれば行えるため、自宅トレーニングでも取り入れやすい。

  3. ケーブルプッシュダウン(プレスダウン
    フォームが安定しやすい。
    肩や腰への負担も少ない。
    ケーブル種目は自宅での実施は難しいが、自宅であればトレーニングチューブで代用可能。

上腕三頭筋の長頭は肩関節をまたぐ二関節筋であり、肩関節の角度によって伸び具合が変わるという特徴があります。

  • 腕を頭上に上げると長頭が大きく伸ばされ、強い刺激が加わります。
  • 腕を下ろした位置では、長頭が短縮位となり働きが抑えられ、代わりに外側頭や内側頭が使われやすくなります。

ストレッチポジションでの上腕三頭筋の長頭(イメージ)

分類プレスダウン系
ベントオーバー系
ライイング系オーバーヘッド系
種目ケーブルプッシュダウン
ダンベルキックバック
スカルクラッシャーフレンチプレス
特徴腕を下に下ろして(体幹に近い位置で)肘の曲げ伸ばしを行うため、長頭が短縮位となり、働きが抑えられる腕を前に出した状態、中間的なポジションで肘の曲げ伸ばしを行う腕を頭上にあげて肘の曲げ伸ばしを行うため、長頭に強いストレッチが加わる
効果外側頭内側頭が相対的に使われやすい三頭筋全体をバランスよく鍛えられる長頭強い刺激が加わる

また、この理論から推測すると、上腕三頭筋に刺激が加わるコンバウンド種目でも

  • 頭上で動作を行うショルダープレスなど ⇒ 上腕二頭筋の長頭へ
  • 腕を下ろした位置で動作を行うディップスなど ⇒ 上腕二頭筋の外側頭・内側頭へ
  • 身体の前方で動作を行うベンチプレスやプッシュアップなど ⇒ 三頭筋全体にバランスよく

このような刺激が加わりやすい可能性があります。

ただし、コンパウンド種目は上腕三頭筋だけでなく胸や肩など多くの筋肉が同時に働くため、ピンポイントで鍛える場所の狙い分けを行うのであれば、アイソレーション種目であるトライセプスエクステンションを取り入れる方が筋肉への刺激を意識しやすく効果的であると考えます。

今回は、上腕三頭筋を鍛える代表的なトレーニングを大まかに解説していきました。
内容としては、三頭筋の部位別の刺激の加わり方、種目による特徴が主となりました。
しかし、初心者の場合、この上腕三頭筋の部位別の鍛え分けに関してあまり気にする必要はないかもしれません。
初心者は、コンパウンド種目を中心に多くの筋肉ををしっかり使うことを意識し、補助的にエクステンションを行うという方が筋肉の成長への近道となると思います。
部位別の鍛え分けは、ある程度筋肉がついてから取り組んでも遅くはありません
ただ、あらかじめ知識を持っておくことで、トレーニング中に狙っている筋肉を意識する「マインド・マッスル・コネクション」を行う上で役に立つのではないでしょうか。


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