「トレーニングを行うなら脚から始めるべき」、「ダイエットをするなら脚の筋肉を使うべき」、「スクワットはキング・オブ・エクササイズ」など、下半身のトレーニングを推奨する言葉を耳にする機会が多いのではないでしょうか。
「日常生活でもスポーツでも足腰が大切!」なんて言葉もよく言われます。
なぜ、それほど下半身のトレーニングを勧めるのでしょうか?
体重や体の動きを支えているのは足腰なので、当然と言えば当然です。
今回は「下半身を鍛える上での基礎知識」ということで、下半身の筋肉を鍛える重要性の再確認を含めてまとめていきたいと思います!
目次
上半身と下半身の筋肉の分布
下半身は全体重を支えて移動するという、よくよく考えると極めて高負荷なトレーニングを、当たり前のように日頃から行っていることになります。
当然、下半身に全身の筋肉の多くが集中して存在しており、その比率は上半身と下半身で4:6とも3:7ともいわれています。
※文献によって筋体積の値や順位の入れ替わりはありますが、比率的にはおおよそ同様の割合といえます。
このように、圧倒的に下半身に大きな筋肉が集中していることになります。
下半身の筋肉を鍛えるメリット
身体の土台となる下半身の筋肉は、全身の筋肉の6~7割を占めます。
鍛えるメリットは数多くあります。
その数多くある中から6つほど選んで提示いたします。
1. 基礎代謝の向上
前記したように、下半身には大きな筋肉が多くあります。
当然、大きな筋肉のほうが多くのエネルギーを消費します。
運動中はもちろんですが、運動をしていないときにも基礎代謝として筋肉が多いほうがエネルギーを消費します。
1日の消費カロリーは、筋肉量が1kg増えた場合、基礎代謝は約13kcal増えると言われています。
基礎代謝は、身体を動かさずにじっとしていても消費されるエネルギー量です。
一見少ないように感じますが、実際には基礎代謝に加えて筋肉を動かすことで、さらにカロリーを消費します。
筋肉量が1kg増えた場合、1日の消費カロリーは約50kcal増加するとも言われています。
大きな筋肉を鍛えることで基礎代謝も増えやすく、太りにくい体質にすることも期待できます。
ダイエットの観点から効率で考えると、上半身のトレ―ニングより下半身トレ―ニングのほうがはるかに効果的です。
ダイエット目的のトレーニングを考えている方は、トレーニングによるカロリー消費の大きな下半身を鍛えるトレーニングから始めると効果を実感しやすいでしょう。
2. 高いダイエット効果
おなか周りの脂肪を落としたいとき腹筋運動を行うという方も多いかと思います。
しかし、脂肪を落とす目的の部分痩せはあまり期待できません。
脂肪減るときには、全身の脂肪がほぼ均一に落ちていきます。
(その中でもおなかの脂肪は落ちにくいといわれています。)
腹筋は下半身の大きな筋肉群に比べれば小さな筋肉になります。
※文献によって筋体積の値や順位の入れ替わりはありますが、比率的にはおおよそ同様の割合といえます。
当然腹筋運動による消費カロリーは、他の大きな筋肉の運動による消費カロリーより少なくなります。
無意味とは言いませんが、腹筋でお腹周りの脂肪を落とす効果は低いと言わざるを得ません。
また、おなか周りの脂肪をとりたいと、過剰に腹筋を行ってしまうと腰を痛める恐れがあります。
お腹周りの脂肪を落としたければ足やお尻のような大きな筋肉鍛える方がよほど効率的なトレーニングとなります。
3. ライフスタイルの向上
日常生活においても下半身の筋肉は生活の土台となります。
歩く・走るなど、足の筋肉が弱ければ日常生活はままなりません。
また、上半身を使うときでも土台は下半身です。
鍛えておくことで、日常生活を疲れにくく楽に過ごせるなどの恩恵をもたらしてくれます。
4. 加齢による筋力低下の防止
年齢を重ねると筋力は低下していき歩行がつらくなったり転倒したり生活に支障が出てきます。
人間は、筋肉を維持するトレーニングを行なわなければ、20歳台をピークとし、30歳ぐらいから10歳加齢するごとに筋肉の5~10%を失っていくといわれています。さらに、60歳をすぎたあたりからその割合は加速します。
これは「加齢性筋減少症(サルコペニア)」と呼ばれます。
加齢による筋肉の減少は全体的に起こりますが、特に太ももやお尻の筋肉の減少は早い段階から進む傾向にあるようです。
特に、下肢の筋肉は生活するうえで最も使う筋肉となるため、筋力の低下は実感しやすくなるでしょう。
若いうちから筋肉を鍛える習慣があると、加齢による筋力の低下を緩やかにすることができます。
また、筋トレは骨にストレスを与えることにより、骨の強化にも貢献します。骨粗しょう症を予防する効果もあり加齢によるスライススタイルの低下を防ぐ効果が期待できます。
5. 脚のむくみ予防・改善
血流が良くなり、足が疲れにくくなる効果があります。
また、ふくらはぎには、血流を足先から心臓に戻す役割があります。筋肉が収縮する際、静脈に圧力がかかり、血流が効率的に心臓に戻ります。ふくらはぎが弱ると血流が悪くなり冷えやむくみの原因となってしまいます。
6. アンチエイジング
基礎代謝の向上や、血行の促進で成長ホルモンの分泌も促進されます。
成長ホルモンは筋肉の成長だけでなく、肌、髪の毛などの美容にも良い影響を与えます。
下半身の筋肉と役割
下半身には数多くの筋肉が存在しますが、トレーニングでは大まかに以下の筋肉群に分けてトレーニングを行います。
1. 大腿四頭筋(太ももの前面)
2. ハムストリングス(太ももの後面)
3. 臀筋群(お尻)
4. 下腿三頭筋(ふくらはぎ)
をターゲットとして行うことが多いと思います。
さらに上記の4つに加え
5. 内転筋群(太ももの内側)とその拮抗筋群
も補助的に行うこともあり、特に女性には太ももの引き締めのために行う方が多くみられます。
1. 大腿四頭筋(太もも前面)
大腿四頭筋は、身体の中で最も大きな筋肉で太ももの前面に位置します。
大腿四頭筋は、大腿直筋、外側広筋、中間広筋、内側広筋の4つの筋肉から構成されます。
外側広筋、中間広筋、内側広筋は、膝関節の伸展にのみ関与する広筋群です。
大腿直筋は、大腿四頭筋の中で唯一の股関節と膝関節の二つの関節を横切る二関節筋です。
このため、大腿四頭筋の役割は、主には膝関節の伸展(膝を伸ばす動作)となりますが、股関節の屈曲(お尻を後ろに突き出す動作)にも関与します。
大腿四頭筋の強化は走る、蹴る、踏ん張る、飛ぶなどの動作に連携するためスポーツでのパフォーマンス向上はもちろんですが、日常生活の質の向上にも効果的です。
また、大腿四頭筋は身体の中で最も大きな筋肉のため、トレーニングによる消費エネルギーも大きく、基礎代謝を上げる効果も高いため、トレーニングによるダイエット効果も高いといえます。
トレーニングメニュー
自重トレーニング: 自重スクワット、ブルガリアンスクワット、ランジなどがあります。
ダンベル&バーベルトレーニング: ダンベルorバーベルスクワットなどが効果的です。
マシントレーニング: レッグエクステンションマシン、レッグプレスマシンなどの利用で鍛えられます。
2. ハムストリングス(太もも裏側)
ハムストリングスは太ももの裏側に位置する筋肉群で、4つの筋肉(大腿二頭筋長頭、大腿二頭筋短頭、半膜様筋、半腱様筋)から構成されます。
ハムストリングの中で大腿二頭筋短頭だけが起始が大腿骨の粗線、停止が腓骨頭となるため膝関節のみにかかわる筋肉となりますが、大腿二頭筋長頭、半膜様筋、半腱様筋は起始が坐骨結節、停止が脛骨もしくは腓骨頭であり、股関節と膝関節の関節を横切ります。
つまり、ハムストリングスの主な役割は、膝関節の屈曲(膝を曲げる動作)、股関節の伸展 (後方へ下げたお尻を前方に突き出す動作)となります。
他にも脚の回旋、膝関節の安定化にも関与します。
強力な筋力を発揮する大腿四頭筋の拮抗筋となるため、スポーツ時に肉離れなどのケガも多くなる部位になります。
競技のパフォーマンスを上げるだけでなく、ケガの予防のためにもしっかり鍛えておきたい筋肉群です。
女性にとってもトレーニングによって太ももを引き締める効果があります。
ハムストリングスを効果的に鍛える種目としては、
レッグカールマシンや、デッドリフト特にスティフレッグデッドリフト(もしくはルーマニアンデッドリフト)、ブルガリアンスクワットなどが挙げられます。
3. 臀筋群(お尻)
臀筋群は、大臀筋、中臀筋、小臀筋の3つの筋肉から構成されているお尻の筋肉です。
臀筋の主な役割は、
- 股関節の伸展(後方へ下げたお尻を前方に突き出す動作)
- 股関節の外転(足を横方向に上げる動作)
- 股関節の内転(横方向上げた足を閉じる動作)
- 股関節の外旋(足を外側にひねり、つま先を外側に向ける動作) などがあります
臀筋が担う股関節の動作を効果的に鍛えることのできる種目に、
ヒップリフト・ヒップスラスト・フルスクワット・バックランジ・ブルガリアンスクワット、アブダクションなどがあります。
4. 下腿三頭筋(ふくらはぎ)
下腿三頭筋はカーフともよばれ、腓腹筋外側頭、腓腹筋内側頭、ヒラメ筋の3つの筋肉から構成されます。
大腿四頭筋や臀筋のようなあまり大きな筋肉のイメージはないかもしれませんが、大胸筋、三角筋、広背筋などの上半身の大きく目立つ筋肉よりも大きく、決して侮ることのできない筋肉です。
ふくらはぎの主な役割は、足関節の底屈(足首で地面を蹴ったり、つま先立ちの状態になること)ですが、腓腹筋は起始が大腿骨内側上顆(内側頭)、外側上顆(外側頭)で停止がキレス腱となり、足首と膝の両方の関節を横断している多関節筋に分類されます。
このため腓腹筋は膝関節の屈曲にも関わります。
ちなみに、足関節の底屈の拮抗筋としては下腿前面の脛骨の外側を走行する前脛骨筋・長母趾伸筋・長趾伸筋があり、足関節の背屈(つま先をすね側に上げる)動作の働きをします。
下腿三頭筋(ふくらはぎ)の代表的なふくらはぎのトレーニングとしては、カーフレイズがあります。
5. 内転筋群
内転筋群は太ももの内側に位置しており、主な筋肉は、大内転筋・小内転筋・長内転筋・短内転筋・恥骨筋・薄筋などがあります。
それぞれ骨盤と大腿骨に接合するように(薄筋は脛骨の内側面に)つながっていて、脚を体の中央線に向けて内側に動かす(内転)働きをします。
股関節の動きを支え、骨盤の固定や姿勢の維持、安定した歩行や走行など、日常生活やスポーツで下半身のバランス調整に重要な役割を果たします。
内転筋群はワイドスタンススクワット、サイドスクワットやサイドランジ、バランスボールアダクション、アダクションマシンなどで鍛えることができます。
内転筋群のトレーニングでは、その拮抗筋となる外転筋群である中臀筋、小臀筋、大腿筋膜張筋などのトレーニングも行いバランスよく鍛えるようにしましょう。
外転筋群はサイドレッグレイズやバンドアブダクション・アブダクションマシンを使用して鍛えることができます。
ちなみに、アダクション(adduction)とは「筋肉の内転」という意味です。
一方、 アブダクション (abduction)は「筋肉の外転」という意味です。
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