ストレッチポジションを有効に活用したい!
サイドレイズの欠点
サイドレイズは三角筋中部を鍛える非常に有効なトレーニングなのですが、ひとつ大きな欠点があります。
それは、「三角筋がストレッチされるほど負荷が減少する」という点です。
サイドレイズにおける各ポジションでの理想とする負荷の方向は、矢印が示す通りです。

重力は常に下向きに作用するため、腕を肩と水平になるまで上げた状態(三角筋が収縮した状態)、つまりトップポジションで欲しい負荷の方向と重力の方向が一致し、負荷が最大になります。
腕を下ろしていくにつれて、欲しい負荷の方向は横方向へと変化するため、負荷は徐々に減少していきます。
ダンベルが肩関節の真下にあるとき、つまり腕を完全に下ろしたときの三角筋への負荷はほぼなくなってしまいます。
サイドレイズでは、三角筋は腕を下ろしたときに最もストレッチされた状態となります。
つまり、三角筋は最もストレッチされている状態となるにもかかわらず、負荷が抜けた状態になってしまうのです。
筋肥大を効率的に促すためには、筋肉がストレッチされた状態でしっかり負荷をかけることが重要となります。
サイドレイズの欠点
➡ 三角筋がストレッチされているとき(腕を下ろしているとき)に負荷がほぼゼロになる。
つまり、
- 腕を上げる(筋肉が収縮する)につれて負荷が増え、水平あたりで最大になる
- 腕を下ろした位置(筋肉が伸びている状態)では負荷が抜ける
- でも本当は、ストレッチ時にも負荷が欲しい(筋肥大にはそれが重要)
言い換えれば、『サイドレイズは筋大を目指す上で、必ずしも効率的な種目とは言えない』ということになります。
そこで、この種目の欠点を補うために、いくつかの工夫が考案されています。
たとえば、ストレッチポジションで負荷を得るために、横になってサイドレイズを行う(負荷のかかる方向を変える)、ケーブルなどで横から引っ張ってもらう、もしくは腕を押さえつけてもらうという方法が有効となります。
具体的には、
- インクラインサイドレイズ・ライイングサイドレイズ(負荷のかかる方向を変える)
- ケーブルサイドレイズ・チューブサイドレイズ(横方向から引っ張る力を利用する)
- マシンサイドレイズ(押さえ付ける負荷を利用する)
といった方法があげられます。
インクラインサイドレイズ

インクラインサイドレイズは、簡単に言えば、インクラインベンチに横向きに寝た姿勢で片手ずつ行うサイドレイズです。
最大の特徴は、三角筋に強いストレッチ刺激を与えられる点にあります。
片手ずつ行うため、両手で行うサイドレイズに比べてトレーニング時間はかかりますが、その分フォームを意識しやすく、効率的に肩に負荷をかけることが可能です。
インクラインサイドレイズの方法
スタートポジション
- インクラインベンチの角度を30〜45度程度に調整します。
- ベンチに体を真横にして横たわり、上側になった片方の手でダンベルを握ります。
- ダンベルを握った肘を軽く曲げ、ダンベルが体の前に出るように構えます。
- 体幹をしっかり固定し、姿勢を安定させる。
- 肩の位置が前に出たり、後ろに下がったりすると、三角筋中部へ効果的に負荷がかかりません。背中が猫背になったり、胸を張りすぎたりしないようにしましょう。三角筋中部へ負荷がしっかりかかっているポジションを確認しましょう。
- ポジションが決まったら、ブレないようにしっかり体幹を維持します。

実施
- 息を吸いながら、体と上腕の角度が頭の高さ~90度になるまで横に腕を上げます。
- 三角筋中部の負荷を意識しましょう。
- 反動は使わないようにしましょう。
- 肘を軽く曲げた状態をキープしたまま動作しましょう。
- 肩関節の硬い方は、トップポジションを肩の高さ(地面と平行)~頭の高さ程度にとどめてもOKです。

- 息を吐きながら、負荷を感じるようにゆっくりと元のポジションに戻していきます。
- 肩の位置を動かさないようにしましょう。
- しっかりコントロールしながら、ゆっくり下ろしてください。
- 反対側の腕も同様に行い、バランスよく鍛えるようにしましょう。
インクラインサイドレイズのポイント
基本的なポイントは通常のサイドレイズに準じますが、若干の違いもあります。
- 反動を使わない
- 三角筋を常に意識して行う
- 軽く肘を曲げた状態を保つ
- 肩をすくめない
- 腕は肘(ひじ)を上げる意識で行う
- トップで1~2秒停止する(可能ならでOK)
- ダンベルを下ろすときはゆっくり
- 呼吸の調整(ダンベルを上げるときに息を吸い、下げるときに息を吐く)
基本的なサイドレイズの方法・ポイントについての詳細はこちらをご参照ください。
以下に、通常のサイドレイズと異なる点を挙げていきます。
重量の目安
インクラインサイドレイズは、想像以上に重量を扱うことが難しい種目です。
- 初心者〜中級者:1〜4kgでも十分
- 上級者でも:5〜8kg程度で丁寧に行う人が多い
重量は高重量を扱うより、フォームを崩さずに行える適切な重量を選びましょう。
最初は最軽量のダンベルもしくはウエイトを持たずに行ってみることをお勧めします。
インクラインベンチの角度
インクラインサイドレイズを行うときのベンチの角度は、30〜45度がおすすめです。
ちなみに、角度が浅いほど可動域が広くなり強いストレッチを得ることができますが、フォームが崩れやすくなります。
- 45度前後:姿勢を安定させやすく、初心者にも扱いやすい
- 30度前後:より強く三角筋にストレッチがかかりやすい
自分のレベルに合わせて、フォームが崩れないことを最優先として選ぶようにしましょう。
最初は45度くらいに設定してフォームを安定させてから、慣れてきたら30度程度に調整してみると、より強い刺激が得られます。
ダンベルの軌道
インクラインサイドレイズでは、腕を前方に出して上げると、動きに「肩の水平外転(横に開く動き)」だけでなく「肩の伸展(後ろに引く動き)」が加わるため、三角筋後部にも負荷が逃げやすくなります。
三角筋中部を狙うには、できるだけ体の真横方向に対して腕を上げる必要があります。
可動域
体の真横方向に腕を上げるため、やや前方にあげる通常のサイドレイズと比べ、可動域はやや狭くなる傾向にあります。
通常のサイドレイズでは
➡ やや前方(自然なカーブを描く軌道)に腕を上げるため、比較的可動域を広くとりやすい。
体の真横に上げるインクラインサイドレイズでは
➡ ピュアに「横方向の動き」を意識するので、可動域はやや狭くなる傾向がある。
トップポジションは、体と上腕の角度が頭の高さ~90度になるまでを目安に横に腕を上げます。
可動域に違和感を感じる方は、肩の高さ(地面と平行)~頭の高さ程度でもOKです。
肩の違和感や痛みが出る場合は、無理して可動域を広げずに、痛みのない範囲で止めるようにしましょう。
体幹の維持
体幹をしっかり維持して、動作中にブレないようにしましょう。
この注意点は通常のサイドレイズと変わりませんが、インクラインサイドレイズは、通常のサイドレイズと体勢が異なるため「重力のかかり方」が変わり、意識の仕方にも若干の違いがあります。
背中が猫背になったり、胸を張りすぎたりしないようにしましょう。
肩の位置も前に出たり、後ろに引きすぎたりしないようにしましょう。
インクラインサイドレイズの応用
インクラインサイドレイズは身体の側面(体の横)で止めて行うこともできますが、今回はよりストレッチを得るために身体の前面に腕を下ろす方法をご紹介しました。

しかし、前に下す動作により、三角筋中部(後方寄り)~後部へ刺激が入りやすくなります。
インクラインサイドレイズのバリュエーションとして、身体の後面に腕を下ろすように行うパターンもあります。

後ろに下ろすため、三角筋中部(前方寄り)~前部へ刺激が入りやすくなります。
鍛える筋肉のバランスを取るため、このような応用を取り入れるのも良いでしょう。
ライイングサイドレイズ
ライイングサイドレイズは、インクラインサイドレイズの角度をさらに倒し、フラットなトレーニングベンチにほぼ水平に横たわった状態で行います。
体を完全に倒すため、ストレッチ重視のトレーニングとなります。

ケーブル・サイドレイズ
ケーブル・サイドレイズは、ケーブルマシンを使用してサイドレイズを行います。
ご自宅で準備することは難しいため、基本的にはジムで利用することとなります。

ケーブルマシンを使用したサイドレイズでは、負荷がかかる方向を変えることで、ストレッチポジションでもしっかり負荷をかけることができるというメリットがあります。
ケーブル・サイドレイズの方法
片手で行う方法(おすすめ)
片手ずつ行うためフォームの意識が高まりやすく、左右差の矯正にも効果的。
セットアップ
- ケーブルマシンの1つの滑車(プーリー)を腕を下ろした際の手の高さ~太ももあたりにセットし、ワイヤーにグリップを取り付けます。
- 滑車(プーリー)に対して横向きに立ち、反対側の手(片手)でグリップを握ります。
- 足を肩幅程度に広げ、軽く肘を曲げます。
- 上体はまっすぐに保ち、肩を落としリラックスさせます。

動作
- 息を吸いながら、グリップを体の横に向かって肩の高さまで上げていきます。
- このとき、肘を軽く曲げた状態は保ちます。

- 息を吐きながらゆっくりと元の位置に戻します。
- 反対側の腕でも同じように行い、バランスよく鍛えるようにしましょう。
両手で行う方法
時短トレーニングに効果的。
セットアップ
- 2連のケーブルマシン(デュアルスタック)を使用します。ケーブルマシンの左右2つの滑車(プーリー)を腕を下ろした際の手の高さ~太ももあたりにセットし、両方のワイヤーにグリップを取り付けます。
- 左右の滑車(プーリー)の間に立ち、体の前面で両手をクロスさせて左手は右側のケーブル、右手は左側のケーブルを持ちます(クロスグリップが一般的)。
- 足を肩幅に広げ、軽く肘を曲げます。
- 上体はまっすぐに保ち、肩を落としリラックスさせます。
動作
- 息を吸いながら、同時に両手を体の横に向かって肩の高さまで上げていきます。
- このとき、肘を軽く曲げた状態は保ちます。
- 息を吐きながらゆっくりと元の位置に戻します
ケーブルマシンの設定
ケーブルサイドレイズにおける滑車(プーリー)の高さは、まずは腕を下ろした際の手首の高さ~やや下あたりに設定して行ってみましょう。
この位置にすることで、腕を自然な軌道で引き上げやすくなり、ストレッチポジションでも十分な負荷がかかるため、三角筋中部を効果的に刺激することができます。
人によっては、もう少し上の方がいい・下の方がいいと思われる方もいると思います。
あとは実際に行ってみて微調整してみましょう。
やってみて、「三角筋の外側にしっかり入ってる感」があれば、その人にとっての正解となります。
チューブ・サイドレイズ
ケーブル・サイドレイズと原理は同じですが、チューブサイドレイズでは、レジスタンスバンドやエクササイズチューブを使用します。
自宅でのトレーニングに簡単に利用でき、出張・旅行などにも簡単に持ち運べます。
ゴムの伸縮を利用するため、チューブが収縮(筋肉がストレッチ)するにつれて、チューブの張力が弱くなるという欠点はありますが、負荷が抜けるポイントを変えることで、ある程度その欠点を補うこともできます。
動きが大きくなるためゴムチューブには、伸張性に優れた素材であることが求められます。
商品によっては伸張性にいまいち乏しいものもありますので、可能であれば実際に手に取って確かめたうえで購入すると安心です。
ネットで購入する場合は、正直 “賭け” のようなところはあります。
私自身も、どうにも使いにくいものを買ってしまった経験があります。
マシン・サイドレイズ
自宅で準備することは難しいため、基本的にはジムで利用することとなります。
マシントレーニングは、フォームの維持がしやすく、初心者にも取り組みやすい点が特徴です。
適切に扱えば、怪我のリスクも最小限に抑えることができます。
マシンサイドレイズでは、ストレッチポジションでは横向き、トップポジションでは下向きというように、それぞれのポジションに適した方向に一定の負荷がかかるよう設計されています。
動作が安定しているので、重さをコントロールしやすく、肩に効かせやすいというメリットがあります。
ただ、サイドレイズのマシンが導入されている施設はそれほど多くないというのが難点となります。
まとめ
サイドレイズは三角筋を鍛える定番種目ですが、その特性上、筋肉がストレッチされるほど負荷が弱くなるという欠点があります。
欠点を補うためには、サイドレイズのバリュエーションである、インクラインサイドレイズやライイングサイドレイズを行う、またはケーブルマシンやチューブ、専用マシンの活用といった工夫が効果的です。
これらを取り入れることで、ストレッチポジションでも効果的に三角筋を刺激することができます。
サイドレイズで、肩にイマイチ効かせられないという方は、サイドレイズを「効かせる種目」に進化させるために、ぜひ今回紹介した方法をためしてみてはいかがでしょうか?。
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