下半身・お尻・背面を鍛える!
デッドリフトバリエーション別に特徴・フォーム・効果まとめ
バーベルデッドリフトには、基本的な「コンベンショナル」以外にも、ワイドスタンス・ルーマニアン・ハーフデッドリフトなど、目的に合わせて使い分けられるさまざまなバリエーションがあります。
同じ“引く動作”でも、スタンス幅や膝の角度を変えるだけで、効きやすい筋肉やトレーニング効果は大きく変わります。
「お尻を重点的に鍛えたい」「背中をもっと使いたい」「腰への負担を減らしたい」など、自分の目的に合ったデッドリフトを選ぶことも重要です。
今回は、主要なデッドリフトバリエーションについて、それぞれの特徴・フォームのポイント・期待できる効果などをわかりやすく解説します。
なお、バリエーションごとに負荷のかかり方も異なるため、安全に行うためにも正しいフォームを意識しましょう。
代表的なバーベルデッドリフトのバリエーション
バーベルデッドリフトのバリエーションには、以下のような種目があります。
それぞれのフォームの違い・主に刺激が加わる筋肉・使い分けを理解しておくといいでしょう。
- コンベンショナルデッドリフト(ナロースタンス)
- ハーフデッドリフト(ラックプル)
- スモウデッドリフト(ワイドスタンス)
- ルーマニアンデッドリフト
- スティッフレッグデッドリフト
- スナッチグリップデッドリフト(ワイドグリップ)
- デフィシットデッドリフト(台に乗って行う)
① コンベンショナルデッドリフト(ナロースタンス)
- デッドリフトの基本といえる代表的なフォーム
- 背中・お尻・もも裏といったバックラインをバランスよく鍛えられる「万能型デッドリフト」

特徴
「デッドリフト」と聞いて一般的にイメージされるのが、このコンベンショナルデッドリフトです。
最も基本的なデッドリフトであり、フォーム習得の基準にもなるため、初心者が最初に取り組むべき種目と言えます。
ナロースタンスで実施することにより、全身の連動性や基礎的な引く動作(ヒンジ動作)の理解を深めることにも役立ちます。
今回は、コンベンショナルデッドリフトの要点を簡潔に解説します。
コンベンショナルデッドリフトについて、より詳しい解説は別記事で紹介しています。
よろしければ、ご参照ください。
フォームのポイント
- 足幅
肩幅〜腰幅程度
足先は前方~軽く外向きに設定すると、股関節が動きやすくなります。 - 手幅
肩幅よりやや広め
両手の内側に膝が入るため、腕がまっすぐ下に降りた位置より、やや外側でバーを握ります。 - 姿勢づくり
膝と股関節を適度に曲げてセット
骨盤をやや前傾させ、胸を軽く張り、背中を丸めないように注意します(ヒップヒンジ)。

- 動作
引き上げ動作は2つのフェーズ(膝下の動作と膝上の動作) によって構成される
① 膝の高さまでは前傾姿勢を保ち、膝関節の伸展をメインにバーを引き上げます。
② バーが膝を超えたあたりから、股関節の伸展を中心に上体を起こしていきます。
バーは常に身体の近くを通過させる意識を持つと、腰への負担が減り正しい軌道を維持しやすくなります。
トップポジションでは身体をまっすぐに立て、背中・お尻を締めるようにフィニッシュします。


向いている目的
全身の筋力向上
大筋群を一度に動員するため、効率よく全身の筋力を伸ばせます。
基礎フォームの習得
最も基本的なデッドリフトであり、ヒップヒンジ動作の感覚、バーの軌道管理、体幹の安定性など、トレーニング全般に役立つ基礎スキルを身につけるのに最適です。
主に鍛えられる筋肉
コンベンショナルデッドリフトは、全身の大筋群を同時に使うコンパウンド種目です。
特に以下の部位に強い刺激が入ります。
- 大臀筋
- ハムストリングス
- 脊柱起立筋
- 広背筋
- 僧帽筋
- 大腿四頭筋
- 前腕(握力)
これらをバランスよく鍛えられるため、「万能型デッドリフト」として非常に有用です。
② ハーフデッドリフト(ラックプル)
- バックライン(背中・お尻・もも裏)の重点的な強化

特徴
ハーフデッドリフト(ラックプル)は、基本的な動作自体はコンベンショナルデッドリフトと共通していますが、バーベルを床から引かず、膝の高さから引き上げる点が大きな特徴です(動作範囲:膝〜直立)。
パワーラックを使用できる場合は、膝の高さにセーフティバー(ストッパー)を設定することで、毎回同じスタートポジションを再現でき、安定したフォームでトレーニングしやすくなります。
コンベンショナルデッドリフトのフルレンジ動作は、2つのフェーズ(膝下の動作と膝上の動作)に分けて考えることができます。
ハーフデッドリフトは、「膝上から立ち上がる動作のみ」を切り出した種目にあたります。
このフェーズでは ’’前傾した上体を直立するまで起こす(股関節伸展中心)フェーズ’’ となります。
床から膝までの区間では大腿四頭筋(脚前側)の関与が比較的強くなりますが、ハーフデッドリフトではこの区間を省くため、背中・臀部・ハムストリングスといったバックラインへの刺激をより集中的にかけやすいのが特徴です。
また、動作中のフェーズ切り替えがなく動作がシンプル、さらに可動域も短いためフォームが安定しやすく、フルレンジのデッドリフトよりも高重量を扱いやすいというメリットがあります。
そのため、ハーフデッドリフト(ラックプル)は、背中・お尻・もも裏を中心としたバックラインの筋肥大や筋力向上に集中したい場面で、補助種目・強化種目として活用されることの多いトレーニング種目です。
フォームのポイント
1. セットポジション
バーの下限は膝の高さに設定します。
足幅は肩幅〜腰幅程度が基本です。
2. グリップ
手幅は肩幅よりやや広めに設定し、足の外側でバーを握ります。
コンベンショナルデッドリフトと同じ感覚で問題ありません。

3. 姿勢と動作
膝を軽く曲げて、股関節をしっかり屈曲させた前傾姿勢からスタートします。
股関節の伸展を中心に上体を起こす意識でバーを引き上げましょう。
背中を常にまっすぐ保ち、腰が丸まらないように注意します。
トップポジションでは身体をまっすぐに立て、背中とお尻の筋肉をしっかり締めてフィニッシュします。

向いている目的
- 背中・お尻・もも裏(バックライン)の重点的な強化したい場合
- デッドリフトの補助種目として、引く力や背中のボリュームを高めたい場合
主に鍛えられる筋肉
- 大臀筋
- ハムストリングス
- 脊柱起立筋
- 広背筋
- 僧帽筋
- 前腕(握力)
③ スモウデッドリフト(ワイドスタンス)
- 最大挙上重量重視(パワーリフティング競技など)
- 内転筋群を中心とした下半身の強化

特徴
スモウデッドリフトは、スタンス(足幅)を大きく広げ、太ももの内側に腕を入れてバーベルを引き上げるデッドリフトです。
足幅を広く取ることで上半身の前傾角度が浅くなり、スタンスをかなり広げた場合はほぼ直立に近い姿勢で引くことになります。
そのため、動作は下半身主導になりやすく、腰や背中へのストレスが比較的抑えやすいという特徴があります。
一方で、腰・背中の負荷が軽減される分、内転筋群(太ももの内側)や大臀筋の関与が大きくなるという特性があります。
また、足幅を広げることでバーベルの挙上距離(可動域)が短くなるため、コンベンショナルデッドリフトよりも高重量を扱いやすい傾向があります。
このような理由から、挙上重量(記録)を競うパワーリフティング競技では、ワイドスタンスが選ばれることが多いフォームです。
フォームのポイント
1. スタンス
足幅は肩幅の1.5〜2倍程度に広げ、つま先は外側に向けます。
股関節に違和感が出ない範囲で調整しましょう。
2. セットポジション
太ももの内側に腕を入れ、膝を外側に押し出すように曲げながら腰を落とします。
胸を軽く張り、背中を丸めないように注意します。
3. 上半身の角度
上半身の前傾は最小限にとどめ、腰が丸まらない範囲でできるだけ身体を立てた姿勢をとります。

4. 動作
主に膝関節の伸展を使い、地面を踏み込むようにバーベルを引き上げます。
トップでは身体をまっすぐに立て、背中・お尻を引き締めてフィニッシュします。

向いている目的
- 高重量に挑戦したい人(パワーリフティング競技など)
- 下半身を重点的に強化したい人(特に内転筋群・大臀筋)
- 腰への負担をできるだけ抑えてデッドリフトを行いたい人
スモウデッドリフトは、挙上距離が短く、腰へのストレスも比較的少ないため、最大重量を狙う場面や下半身主導のデッドリフトを行いたい場合に有効です。
一方で、内転筋の柔軟性や股関節の可動域が求められるため、無理にスタンスを広げすぎないよう注意しましょう。
主に鍛えられる筋肉
- 内転筋群
- 大臀筋
- 大腿四頭筋
- ハムストリングス
- 広背筋
- 僧帽筋
- 前腕(握力)など
④ ルーマニアンデッドリフト(RDL)
- ハムストリングス・臀筋の集中強化

特徴
ルーマニアンデッドリフト(RDL)は、デッドリフト系種目の中でも「挙上重量を競う」よりも、「狙った筋肉に効かせる」ことに特化した種目です。
特に、太ももの裏を使う感覚が掴めない人にとって、非常に有効なトレーニングになります。
動作の特徴としては、膝は軽く曲げる程度にとどめ、股関節の折りたたみ(ヒップヒンジ)動作を中心にデッドリフトを行います。
通常のデッドリフトと比べて膝関節の関与が少ないため、ハムストリングスが強くストレッチされた状態で高い負荷を受けるという、RDL特有の刺激が得られます。
そのため、RDLはハムストリングスと臀部を狙い撃ちする補助種目としてよく使われます。
また、ハムストリングスや股関節まわりの柔軟性に応じて、無理のない範囲で可動域の深さを調整できる点も特徴です。
フルレンジのデッドリフトのように必ずしもバーベルを床まで下ろす必要はなく、フォームを保てる位置までの可動域で十分な効果を得られます。
そのため、体の柔軟性が動作の質に大きく影響する種目でもあります。
可動域はトップレンジ(立位付近)中心・比較的狭めとなるため、高重量を追い求める種目ではなく、中重量でのフォーム精度が重要になります。
フォームのポイント(基本手順)
ここまで解説してきた
①コンベンショナルデッドリフト
②ハーフデッドリフト(ラックプル)
③ワイドデッドリフト(スモウデッドリフト)
は、いずれも床やラックに置かれた状態からバーベルを引き上げる動作を基本とします。
一方、RDLは、バーベルを引き上げた直立姿勢から動作を開始し、筋肉のストレッチを強く感じる位置まで下ろしてから再び引き上げる種目です。
これまでのデッドリフトとはスタート位置と動作の意識が異なるため、ここで一度、意識の切り替えをしておきましょう。
セットアップ
- RDLは直立姿勢から動作を開始する種目のため、バーベルは床から通常のデッドリフトで引き上げてセットするか、パワーラックなどを用いてもも付近からラックアップして始めます。
- 足幅は肩幅〜腰幅程度。
- 手幅は肩幅よりやや広めにし、オーバーグリップでバーベルを保持(ミックスグリップでも可)。
- 骨盤を軽く前傾させ、軽く胸を張り、背筋をまっすぐ保ちます。

ヒップヒンジ動作(バーベルを下ろす)
- お尻を後方へ引く意識で、上体を前に倒していきます。
- 膝は「軽く」曲げる程度にとどめます。
- 背中を丸めず、バーベルは脚の前面に沿わせるように下ろします。
- ハムストリングスに強くストレッチを感じる位置まで下ろします。
(それぞれの柔軟性にもよるが、一般的には膝下〜すね周辺が目安)
※必ずしもバーベルを床まで下ろす必要はありません。

トップポジションへ
- お尻を前に戻す意識で股関節を伸展し、立ち上がる
- 体を起こし切った際に、腰を反りすぎないよう注意する
- 体を起こし切った際に、腰を反りすぎないよう注意する

注意点
・ 背中が丸まると腰部に負荷が集中するため、常に背筋をまっすぐ維持する
・ バーベルは身体から離しすぎず、脚の前面に沿わせるように動かす
・ バーベルを下ろす深さは、「背中の形が崩れない範囲」にとどめる
無理にバーベルを床まで下ろす必要はない
・ 握り方はオーバーグリップを基本とする
- 左右差が出にくく、フォームが安定しやすい
- フォームが安定することで、ヒップヒンジ動作に集中しやすい
- RDLは高重量を前提とした種目ではない
以上の理由から、RDLではグリップ力を補う目的でミックスグリップを使う必要性は低いといえます。
そのため、使用重量が増えて 素手+オーバーグリップ では保持が難しい場合は、オーバーグリップのままストラップやパワーグリップを使用するほうがシンプルで合理的です。
ただし、ミックスグリップが絶対にダメというわけではありません。
どうしても素手でトレーニングを続けたい場合は、ミックスグリップを使用しても問題ありません。
※ ミックスグリップで行う場合は、左右の手の向きを必ずローテーションするようにしましょう。
向いている目的
- ハムストリングス・臀筋を集中的に鍛えたい場合
- ヒップヒンジ動作の習得・再確認
スクワットやデッドリフト全般のパフォーマンス向上につながる。 - 下半身のバランス強化
太ももの前だけでなく裏側も強化したい場合。(太もも前後の筋力差改善) - 姿勢改善・スポーツパフォーマンス向上
特にランニング・ジャンプ系の競技に有効
主に鍛えられる筋肉
- ハムストリングス
(大腿二頭筋・半膜様筋・半腱様筋) - 大臀筋
- 脊柱起立筋(姿勢保持・安定化として)
- 内転筋群(補助的)
⑤ スティッフレッグデッドリフト(SLDL)
- ハムストリングスのストレッチ刺激を最大限に高める

特徴
スティッフレッグデッドリフト(SLDL)は、膝をほとんど曲げずに行うデッドリフト系種目で、ハムストリングスに対して非常に強いストレッチ刺激が入るのが特徴です。
ルーマニアンデッドリフト(RDL)とよく似た種目ですが、
- RDL:膝を軽く曲げて行う
- SLDL:膝をほぼ伸ばしたまま行う
という明確な違いがあります。
SLDLはRDLよりも膝を伸ばした状態で行うため、デッドリフト系種目の中でも特にストレッチ要素が強いバリエーションです。
RDLよりもストレッチ要素が強くなるため、ハムストリングスの柔軟性が必要となります。
ハムストリングスの柔軟性が不足している場合、動作が浅くなったり、腰を丸めやすくなる傾向があります。
体幹の安定性が強く求められ、フォームが崩れると腰部への負担が急激に増えやすい点にも注意が必要です。
ストレッチ要素が強いため、使用重量は控えめに設定するのが基本です。
また、リスク管理が重要なため、初心者はRDLでフォームと柔軟性を身につけてから取り入れるのが理想です。
フォームのポイント(基本手順)
SLDLもRDLと同様にバーベルを引き上げた直立姿勢から動作を開始し、筋肉のストレッチを強く感じる位置まで下ろしてから再び引き上げる種目です。
セットアップ
- 足幅は腰幅〜肩幅程度
- グリップはオーバーグリップ(ミックスグリップでも可)
- 背中はまっすぐを維持
- 膝は「軽く伸ばした状態」にし、完全にロックしない

動作
- 股関節を屈曲させ上体を前へ倒していく
膝はほとんど曲げず、お尻を後ろへ引くように股関節を屈曲させる(ヒップヒンジ) - ハムストリングスに強いストレッチがかかる位置まで下ろす
(それぞれの柔軟性にもよるが、一般的には膝〜膝下あたりが目安)
※必ずしもバーベルを床まで下ろす必要はありません。

- お尻を前へ押し戻す意識で、背中を丸めずに立ち上がる

注意点
- 背筋をまっすぐに保つ
背中が丸まると腰部への負荷が急増します。
SLDLは膝をほとんど曲げない分、特に注意が必要です。 - バーベルを下ろす深さは「背中の形が崩れない範囲」にとどめる
バーベルを下ろす深さは柔軟性に左右されます。
無理に床まで下ろす必要はありません。 - 使用重量は控えめに設定する
重量よりも、可動域とストレッチ感を優先します。
「伸びている感覚」をしっかり得られる重量設定が理想です。 - バーは身体から離しすぎず、脚の前面に沿わせるように動かす
- 握り方はオーバーグリップを基本とする
理由はRDLと同様に
①左右差が出にくくフォームが安定しやすい
②フォームが安定することで、ヒップヒンジ動作に集中しやすい
③ SLDLは高重量を前提とした種目ではない
以上の理由から、SLDLではグリップ力を補う目的でミックスグリップを使う必要性は低いといえます。
使用重量が増えて『素手+オーバーグリップ』では保持が難しい場合は、ストラップやパワーグリップの使用が合理的です。
どうしても素手でトレーニングを続けたい場合は、ミックスグリップでもよいが、左右の手の向きを必ずローテーションする。
向いている目的
- ハムストリングスのストレッチ刺激を最大限に高めたい場合
- RDLではストレッチ感を得にくい人の補助種目
- ヒップヒンジの可動範囲を広げ、可動域の改善を図りたい場合
- ハムストリングス強化によるケガ予防
(特にスポーツ選手の肉離れ・損傷予防)
主に鍛えられる筋肉
- ハムストリングス(大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋)
RDLよりもさらに強いストレッチ刺激が入る - 脊柱起立筋
体幹の安定・姿勢保持として高い負荷 - 大臀筋(補助的)
メインターゲットはハムストリングス
⑥ スナッチグリップデッドリフト(ワイドグリップ)
- ハムストリングス・臀部 + 背中全体の強化
- デッドリフトの初動パワー強化

特徴
スナッチグリップデッドリフトは、手幅を大きく広げることで上半身を低く保ち、通常より可動域が広くなる、デッドリフトのバリエーションです。
可動域が広い分、床からバーを引き始める局面で大きな力を発揮する必要があり、初動パワーの強化につながります。
また、引き上げ距離が長くなるため背中全体への負荷が高まり、股関節と膝の屈曲も深くなることで下半身と背中を同時に使う感覚が養われます。
その特性から、デッドリフトの補助種目として初動のパワー強化に有効なほか、ウエイトリフティングにおけるスナッチ動作の基礎強化としても用いられます。
可動域の広さと背中への高い負荷が特徴のため、重量を競うメイン種目というより、フォームとパワーを磨く補助種目として位置づけられます。
フォームのポイント(基本手順)
スタートポジション
- 足幅は腰幅〜肩幅程度
- 手幅は大きく広げて握る(目安はスナッチ幅)
- 背中はまっすぐを維持し、胸を張る
- 肩甲骨を軽く下制・内転させる
- 股関節と膝は、通常のコンベンショナルデッドリフトよりやや深く屈曲させる

動作
- 前傾姿勢を維持しつつ、脚と背中を同時に使う意識で引き始める
バーベルはすねの近くを通るように、身体から離さずに引き上げる - バーが膝を超えたあたりから、前傾姿勢 ⇒ 直立へと体を起こしていく
- トップで背中とお尻を引き締めてフィニッシュ
背中を反らしすぎないように注意する

注意点
- 握り幅が広い分、背中が丸まりやすい
セットアップ時の姿勢作りが重要 - 股関節が先に上がりすぎると背中に負荷が集中する
(いわゆるヒップショットに注意) - 可動域が長くなるため、必然的に重量設定は通常のデッドリフト(コンベンショナルデッドリフト)より軽めとなる
向いている目的
- ハムストリングス・臀部に加えて、背中全体を強く鍛えたい中級者以上
- デッドリフトの初動パワーを強化したい場合
- スナッチ動作の基礎トレーニング(ウエイトリフティング系)
- 可動域の広い引き動作を通じて、フォーム安定性・姿勢維持力を高めたい場合
主に鍛えられる筋肉
- 大臀筋
- ハムストリングス
- 脊柱起立筋
- 大腿四頭筋
- 広背筋
- 僧帽筋
- 前腕(握力)
⑦ デフィシットデッドリフト(台に乗って行う)
- デッドリフトの初動パワー強化

特徴
デフィシットデッドリフトは、床より少し高い位置(台やプレートの上)に乗って行うデッドリフトです。
通常よりもバーベルの置き位置が低くなるため、初動の可動域が大きくなります。
可動域を意図的に広げることで、床からの引きはじめの力(レッグドライブ)を強化でき、下半身と背中を同時に使う能力が向上します。
そのため、デッドリフトの初動パワーを高める補助種目として非常に効果的であり、弱点補強(特に床引きの引き出し部分)を目的に、中級〜上級者が取り入れるケースが多く見られます。
また、可動域が広がる分、柔軟性とフォームの安定性が通常以上に求められる点も特徴です。
フォームのポイント(基本手順)
セットアップ
- 高さ2〜10cm程度の台やプレートの上に立つ
台の安定性は必ず確認する(不安定な状態では行わない)
高さを上げすぎるとフォームが崩れやすいため注意 - 足幅は通常のデッドリフトと同様に、腰幅〜肩幅程度
- バーに近づき、すねに軽く触れる位置でセットする
- 胸を張り、背中をニュートラルに保ったまま、股関節と膝を曲げてグリップする

動作
- 脚と背中を同時に使う意識で引き始める
深い位置からのスタートになるため、初動でお尻が先に上がりやすい点に注意
バーが膝を通過するまで、前傾姿勢と背中の形を維持する - バーが膝を超えたあたりから、前傾姿勢 ⇒ 直立へと体を起こしていく
- トップで背中とお尻を引き締めてフィニッシュする
背中を反らしすぎないように注意する
注意点
- フォームが安定していない状態で行うとリスクも高いため、通常のデッドリフトが安定して行えるようになってから導入するのが適切です。
- 台の高さを高くしすぎると腰部への負荷が極端に増えるため、まずは2〜5cm程度から開始するのが安全
- スタートポジションが低くなる分、初動の可動域が広がり、フォームが崩れやすくなります。
特に背中が丸まると怪我のリスクが高まるため、通常以上に姿勢の維持を意識することが重要。 - 使用重量は、通常のデッドリフトより10〜20%程度軽く設定するのが一般的
- 通常のデッドリフトより難易度が高いため、「効かせたい種目」ではなく「動作改善・弱点補強」を目的に行う
向いている目的
- デッドリフトの初動(床引き)の強化
スタート局面の弱点補強 - 可動域を広げ、ヒップヒンジ動作を安定させたい場合
- 脚と背中の連動性を高め、床引きが苦手な人のフォーム改善
- ハムストリングスと臀筋の動員を増やし、下半身主導の引き動作を強化したい場合
主に鍛えられる筋肉
- 大臀筋
- ハムストリングス
- 脊柱起立筋
- 大腿四頭筋
- 広背筋
- 僧帽筋
- 前腕(握力)
目的別おすすめ早見表(デッドリフトバリエーション)
| 目的・課題 | おすすめ種目 | 理由・ポイント |
|---|---|---|
| デッドリフトの基本を身につけたい | コンベンショナルデッドリフト | 基本フォーム・ヒップヒンジ・全身連動を学べる万能型 |
| 全身の筋力を効率よく高めたい | コンベンショナルデッドリフト | 大筋群をバランスよく動員できる |
| 背中・お尻・もも裏を重点的に鍛えたい | ラックプル | 膝上動作に集中でき、バックラインへの刺激が強い |
| 最大重量を伸ばしたい | スモウデッドリフト | 可動域が短く、高重量を扱いやすい |
| 腰への負担を抑えてデッドリフトを行いたい | スモウデッドリフト | 上体が立ちやすく、腰部ストレスが比較的少ない |
| 臀部・ハムストリングスを集中的に鍛えたい | ルーマニアンデッドリフト スティッフレッグデッドリフト | 膝関与を抑え、臀部・太もも裏に強い刺激が入る |
| ハムストリングスのストレッチ刺激を最大化したい | スティッフレッグデッドリフト | 膝をほぼ伸ばすことで最も強い伸張刺激が得られる |
| デッドリフトの初動パワーを高めたい | デフィシットデッドリフト スナッチグリップデッドリフト | 可動域拡大により引き始めのパワー強化に有効 |
| 背中全体を強く鍛えたい | スナッチグリップデッドリフト | 広い可動域とワイドグリップで背中への負荷が高い |
| 弱点補強・補助種目として使いたい | RDL / SLDL / ラックプル / デフィシット | メイン種目を補完する目的で有効 |
まとめ
デッドリフトにはさまざまなバリエーションがあり、それぞれ負荷のかかり方や狙いやすい筋肉が異なります。
これらのバリエーションを理解・使い分けることで、『お尻やハムストリングスを重点的に鍛えたい』、『背中をより強く使いたい』、『腰への負担を抑えながらトレーニングしたい』といったように、自分の目的や課題に合ったデッドリフトを選択できるようになります。
また、今回はバーベルデッドリフトのバリエーションをまとめましたが、ダンベルやケトルベルなど、使用する器具を変えることでも動作範囲や安定性に変化が生じます。
このようにバリエーションを持つことは、トレーニングのマンネリ化を防ぐだけでなく、停滞期の打破を目的として刺激に変化を加える手段としても非常に有効です。
ただし、初心者がまず習得すべきバーベルデッドリフトは、あくまで基本となる『コンベンショナルデッドリフト』です。
他のバリエーションに挑戦する際は、コンベンショナルデッドリフトのフォームが安定して身についてから取り入れることをおすすめします。
まずは基本を固め、弱点や目的に応じてバリエーションを使い分けていくことで、安全かつ着実にデッドリフトのパフォーマンスを高めることができます。


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