腹筋の構造を覚えておこう!
腹筋は、単一の筋肉ではなく4つの筋肉(腹直筋・外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋)が折り重なる四層構造で形成されています。
それらの筋肉は協力して、体幹のコントロール・姿勢の維持・内臓を正しい位置に維持する・腹圧を高めるなどの役割を果たします。
まずは、腹筋を構成する4つの筋肉の位置とその役割について理解しましょう。

腹直筋

腹部前面にある筋肉であり、腹筋の中でも最も目立つ筋肉といえます。
腹直筋は、平たく縦に長い筋肉であり、真ん中を縦に貫く「白線(はくせん)」という結合組織で構成された線状のスジによって左右に区切られます。
さらに、横に数本の「腱画(けんかく)」という結合組織の帯状構造のスジが3~4本走行しており、それにより上下に短い区間に区切られます。
その境界線によって筋肉が6つ(人によっては8つ)に分けられ、いわゆる「シックスパック」と呼ばれる形を作ります。
起始・停止
起始 : 恥骨結合と恥骨陵
停止 : 第5~7肋軟骨および剣状突起の前面
働き
腹直筋は背中を前方に丸める体幹屈曲動作や姿勢を維持することにも使われる筋肉です。
また、腹圧の維持にも関与するため、他の部位の多くの筋力トレーニングの際にも補助的に使われています。
腹直筋を鍛えて厚みを増すことで、より腹筋の溝が深くなり、シックスパックがくっきりと見えるようになります。
外腹斜筋

腹部の側面、いわゆる脇腹部分に位置する左右対となる筋肉で、腹部の側面にある腹筋の中では最も表層部に存在します。
起始・停止
起始 : 第5~第12肋骨外面
停止 : 鼡径靭帯、腹直筋鞘前葉の一部、腸骨稜外唇の前方1/3
働き
外腹斜筋は左右の一方を強く稼働することで、体を横に曲げる(体幹部の側屈)、体をひねる(体幹部の回旋)動作に関わり、左右両側の筋肉が同時に作用した場合は腹直筋と共に体幹部の屈曲動作に関しても働きます。
内腹斜筋

腹部の側面に位置する筋肉で、外腹斜筋の深層に存在します。
起始・停止
起始 : 内腹斜筋は胸腰筋膜深葉、上前腸骨棘、鼡径靭帯、腸骨稜の中間線
停止 : 第10~12肋骨の下縁(上部)、腹直筋鞘(中部)、精巣挙筋(下部)
働き
外腹斜筋と同様に体幹部の回旋、側屈、屈曲に関わります。
また、呼吸や排便、重いものを持ち上げるなどで腹圧を高める際にも働きます。
腹圧の調整は、内臓を保護し、体の安定性を維持するために重要です。
外腹斜筋および内腹斜筋を鍛えるメリット・デメリット
外・内腹斜筋を鍛えることで、体幹の安定した動きを得ることができるため、スポーツのパフォーマンス向上に役立つなどのメリットがあります。
また、外・内腹斜筋は腹横筋と共に、お腹のくびれを形成する筋肉になるため、男女ともに引き締まったお腹を目指したい人はぜひ鍛えてほしい筋肉です。
ただし、高重量のサイドベンドなど大きな負荷で鍛えすぎると筋肥大によって厚みが出てしまい寸胴体系になってします恐れがあります。
ボディメイク目的の場合は鍛えすぎには注意したほうがいいかもしれません。
ボディメイク目的のトレーニングであればツイストクランチやバイシクルクランチなど自重トレーニングがお勧めとなります。
腹横筋

内腹斜筋のさらに内側、側腹の最も深層にある筋肉(インナーマッスル)を指します。
起始・停止
起始 : 腹横筋は第7~第12肋軟骨の内面、腰筋膜、鼡径靭帯、腸骨稜
停止 : 剣状突起、白線、恥骨
働き
腹横筋は横隔膜と括抗的に働き、下位肋骨を下方に引き下げる作用を持つため、腹式呼吸において腹を凹ませ息を吐く時の主力筋となります。
腹直筋、腹斜筋群と共に働き、激しい運動時の呼気や咳の補助、腹圧(腹腔内圧)を高め腰椎の安定性を保つことなどに貢献し、「天然のコルセット」と呼ばれることもあります。
他にも内臓のポジションを保つ、排便を助けるという役割も持ちます。
腹横筋の特徴
他の筋群と違うところとしては、体幹の動きには直接関与しないところです。
腹横筋に関しては、一般的なトレーニングで腹圧をかけることにより鍛えられる部位ともいえます。
腹筋と一緒に覚えておきたい筋肉
腹筋の主な役割に背中を前方に丸める体幹屈曲動作、体を横に曲げる(体幹部の側屈)、体をひねる(体幹部の回旋)があります。
腹筋トレーニングでは主にこれらの運動を用いて鍛えていくのですが、同時に股関節屈曲運動を伴うトレーニングが多くあります。(シットアップ・レッグレイズなど)
股関節の屈曲に関与する筋肉(股関節屈曲筋)には、主に以下のようなものがあげられます。
主な股関節屈曲筋
筋肉名 | 主な特徴・役割 |
---|---|
腸腰筋 | 股関節屈曲の最重要筋。腸骨筋・大腰筋・小腰筋を合わせた総称。 |
大腿直筋 | 大腿四頭筋の一部。膝伸展とともに股関節屈曲にも関与。 |
縫工筋 | 最長の筋肉。股関節屈曲・外旋・外転、膝関節屈曲にも作用。 |
恥骨筋 | 主に内転筋群の一つだが、股関節屈曲にも関与。 |
短内転筋 | 内転だけでなく、股関節屈曲も補助。 |
長内転筋 | 同様に補助的に股関節屈曲に働く。 |
薄筋 | 股関節の内転・屈曲、膝関節の屈曲にも関与。 |
中でも、腸腰筋は腹筋トレーニングに大きく関与します。
腹筋群と一緒に「腸腰筋」も理解しておきましょう。
腸腰筋

腸腰筋は、「腸骨筋」と「大腰筋」、そして一部の人に存在する「小腰筋」の3つの筋肉で構成されており、主に股関節の屈曲動作に関与します。
腸腰筋の構成
①腸骨筋
骨盤の腸骨内面に付着する筋肉で、腸腰筋の中で最も深層に位置します。
主に股関節の屈曲動作を担い、大腰筋とともに股関節の安定や脚の引き上げに関与します。
起始・停止
起始 : 腸骨窩(腸骨の内側面)
停止 : 大腿骨の小転子 ※大腰筋の腱と合流して付着
働き
股関節の屈曲
骨盤を前傾させる動作の補助
②大腰筋
腰椎から大腿骨にかけて伸びる深層の筋肉です。
体幹と下肢をつなぐ重要な筋肉であり、股関節の屈曲や姿勢の安定、腰椎の安定化に関わります。
起始・停止
起始:第12胸椎〜第5腰椎の椎体および肋骨突起
停止:大腿骨の小転子
働き
股関節の屈曲
腰椎の安定化
骨盤の前傾補助
体幹の前屈にも関与
③小腰筋
小腰筋は、大腰筋の前側に位置する細くて小さな筋肉で、人によっては存在しないこともあります(約40~60%の人にしか存在しないとされます)。
もともと大腰筋からの分束ということもあり、なくても大腰筋があれば問題はありません。
股関節の運動にはあまり関与せず、主に腰椎の安定や体幹の補助的な働きを担います。
起始・停止
起始:第12胸椎〜第1腰椎の椎体
停止:恥骨櫛および腸骨筋膜
働き
腰椎の屈曲補助
腰椎の安定
体幹の補助的なサポート
腸腰筋はスポーツや日常動作で重要な働きをします。
例えば、腸腰筋を使って脚を引き上げる力が強くなることで、速く走る能力を高めることもできます。
また、腸腰筋を鍛えることで、体のバランスを保ち、姿勢を維持しやすくなります。
腸腰筋の動きが弱くなると、骨盤の前傾や腰椎の前弯が起こりやすくなり、姿勢が崩れる原因となります。
姿勢の崩れは腰痛の原因になります。
腸腰筋の強化により、姿勢の改善、腰痛予防・改善効果も期待できます。
また、運動不足などから腸腰筋は硬くなりやすく、腸腰筋の硬さも姿勢不良や腰痛の原因になることがあります。
トレーニングやストレッチでバランスよくケアすることが推奨されます。
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