デッドリフトの効果・正しいやり方・注意点を初心者向けに徹底解説!
「デッドリフトは難しそう…」「腰を痛めそうで怖い…」
そんな不安から、挑戦できずにいる初心者の方も多いのではないでしょうか。
しかしデッドリフトは、正しいフォームを身につければ、全身の筋力アップ・姿勢改善・基礎代謝向上に大きく貢献する “超効率的なトレーニング” です。
特に背中・お尻・もも裏といった “身体の後面の大きな筋肉(バックライン)” を一度に鍛えられるため、筋トレ初心者こそ早めに習得しておきたい種目といえます。
今回は、バーベルデッドリフトの効果・正しいフォーム・注意点などについて、初めての人にもわかりやすく解説します。
バーベルデッドリフト

バーベルデッドリフトとは、床に置いたバーベルを持ち上げるシンプルかつ全身を使う代表的な筋力トレーニング種目です。
筋トレの「三大種目(ビッグスリー)」としても知られ、スクワット・ベンチプレスと並ぶ重要な基本種目のひとつです。
名前の由来は、床に置かれた “動かない(Dead)” 重りを “持ち上げる(Lift)” 動作から来ていると言われています(※諸説あり)。
デッドリフトは 全身の筋肉を連動させて行うため、扱える重量が大きいのが特徴 です。
適切に行うことで全身の筋力を効率よく高めることができます。
特に、背中から下半身の後ろ側の大きな筋肉群(ハムストリングス・大臀筋・脊柱起立筋・広背筋など)に強い刺激を加えることができます。
また、ナロースタンスで行う(コンベンショナルデッドリフト)・ワイドスタンスで行う(相撲スタンス=スモウデッドリフト)
他にも、ルーマニアンデットリフト・スティッフレッグデッドリフト・ハーフデットリフト(ラックプル)・スナッチグリップデッドリフト(ワイドグリップ)・デフィシットデッドリフト(台に乗って行う)など多くのバリエーションがあるのも特徴です。
バーベルデッドリフトで鍛えられる主な筋肉
バーベルデッドリフトは、バリエーションによって刺激が入りやすくなる筋肉が変わります。
全体的な傾向としては、ハムストリングス・大臀筋・脊柱起立筋を中心とした背面全体に強い刺激が入ります。
特に下半身の後ろ側と背中の筋群を総合的に鍛えられるため、身体の後面を効率よく強化できるのが特徴です。
さらに、バーベルデットリフトは扱える重量が大きいため、これらの筋肉群に非常に強い刺激を加えることができます。
太字がメインターゲットとなります。
【背中】
- 脊柱起立筋
- 広背筋
- 僧帽筋(特に上部~中部)
【下半身】
- ハムストリングス
- 大臀筋
- 大腿四頭筋(立ち上がり動作時に関与)
【その他】
- 前腕筋群(バーベルを握る力)
- 腹筋群(姿勢の安定) など
バーベルデッドリフトの効果
デッドリフトには多くの効果があります。
その中でも特に代表的なものをいくつかご紹介します。
- 全身の筋力強化・筋量増加
デッドリフトは、主に下半身や背中など大きな筋肉を一度に鍛えることができるコンパウンド種目(多関節運動)です。
効率よく全身の筋力を強化し、筋肉量を増やすことができます。
特にバーベルデッドリフトは、つながった1本のバーを両手で握るため安定性が高く、扱える重量も大きいのが特徴です。
高重量を扱うことによって、筋肥大効果もより得やすくなります。 - 下半身の引き締め・ヒップアップ効果
大臀筋(お尻)とハムストリングス(太もも裏)が強く刺激されるため、脚全体の引き締めやヒップアップに非常に効果的です。
美尻・美脚を目指す方にもおすすめのトレーニングです。 - スポーツパフォーマンスの向上
地面を押す力・踏ん張る力・全身の連動性が高まるため、ジャンプ力・スプリント・タックル・投球動作など、さまざまなスポーツ動作のパフォーマンス向上に貢献します。 - 日常生活がラクになる
重い物を持ち上げる、かがむ、姿勢を保つ、といった日常動作がスムーズになります。
腰・お尻・もも裏が強くなることで、疲れにくい体づくりにもつながります。 - 基礎代謝アップ・ダイエット効果
筋肉量が増えることで基礎代謝が向上し、脂肪が燃えやすい体質になります。
さらにデッドリフトは大きな筋肉を多く使うため、トレーニング自体の消費カロリーも高いのが特徴です。
ダイエットやボディメイクを目的とした筋トレとしても非常に効果的です。 - 姿勢改善・腰痛予防
デッドリフトでは脊柱起立筋をはじめとした背中の筋肉が鍛えられるため、猫背・反り腰といった姿勢の崩れの改善に役立ちます。
また、腹筋群も同時に働くため体幹が安定し、姿勢の乱れからくる腰痛の予防にもつながります。 - 握力の向上
デッドリフトでは常に重いバーベルを握り続けるため、前腕の筋肉が鍛えられ、自然と握力が強くなります。
握力が強くなると、荷物を持つ動作だけでなく、他のトレーニングのパフォーマンス向上にも役立ちます。 - 体幹の強化
デッドリフトは背中(特に脊柱起立筋)がメインターゲットですが、姿勢を安定させるために腹筋群(腹横筋・腹斜筋など)も強く関与します。
結果、体幹の強化に強く貢献します。 - 短時間で高い効果が得られる
デッドリフトはバックライン(身体の後面)を中心に、複数の大筋群をまとめて鍛えることができます。
トレーニング時間が限られている方でも 短時間で全身トレーニングの効果を得られる非常に効率的な種目 です。
ダンベルデッドリフトとバーベルデッドリフトの違いは?
デッドリフトには「バーベル」以外にも「ダンベル」で行う方法もあります。
どちらも共通してヒップヒンジ(股関節の動き)を使って背面の筋肉を鍛えるトレーニングですが、特徴や得意分野は異なります。
| 項目 | ダンベルデッドリフト | バーベルデッドリフト |
|---|---|---|
| 必要な器具 | ダンベル2個 | バーベル+プレート |
| 可動域 | 広く取りやすい | ダンベルよりやや狭い |
| 負荷 | 軽〜中負荷向き(重量上限がある) | 中~高負荷に向き(高重量まで扱える) |
| フォームの自由度 | 左右独立しているため、自由度が高い | つながった1本のバーで行うため、ダンベルに比べれば自由度は低くなる |
| 難易度 | 初心者~中級者向け 軽量で行えるという視点では初心者向けといえるが、自由度が高いが故にある程度のフォームの安定性が必要となる。 さらに特に狙いたい部位がある場合は相当の知識とボディコントロールが必要 多くの場合はダンベル重量に上限があるため、筋力が十分ある上級者にとっては物足りなくなることがある。 | 初心者~上級者向け 1本のシャフトで固定されているため、フォームが安定しやすく高重量まで扱いやすい(高負荷なトレーニングが可能)。 ラックを使いバーのみから始めれば初心者でも取り組みやすい。 重量上限がほぼないといえるため、上級者まで満足なトレーニングが行える。 |
| 安全性 | 極端な高重量を扱うことが少ないため、安全性が高い | 重量が重くなるほどリスクが増す |
| 場所 | 自宅トレーニングにも向いている もちろんジムでも行える コンパクトで省スペース | 基本的にはジムで行うトレーニング バーベル分の横幅が必要 さらに高重量となるとプレートも相当量必要 床の耐久性・防音性なども考慮しなければいけない |
バーベルデットリフトは安定性が高く、圧倒的な高重量設定を行えるという魅力があります。
姿勢維持 + 高重量の影響を強く受ける 脊柱起立筋強化 や、高重量設定による 全身の筋力向上目的 の場合は、バーベルを使ったデッドリフトを行うのがおすすめ です。
一方、ダンベルデッドリフトはバーバルほど重い重量を扱うことはできませんが、可動域を広く使ってトレーニングを行うことができるという利点があります。
特に、ハムストリングやお尻へストレッチ刺激を加えやすい という特徴があります。
重量より可動域を重視したトレーニング を行う場合は、ダンベルを使ったデッドリフトを行うのがおすすめです。
もちろん行う場所で使い分けるというのもありです。
自宅でトレーニングがしたい → ダンベルデッドリフト
本格的に鍛えたい・ジムで行う予定 → バーベルデッドリフト
通常のデッドリフトとは?
デッドリフトには多くのバリエーションがありますが、一般的に『通常のデッドリフト』 と言う場合は、足幅が肩幅〜腰幅程度のナロースタンスで行う「コンベンショナルデッドリフト」を指すことが多いかと思います。
そもそも “Conventional” には 「伝統的な」「従来の」という意味があります。
また、バーベルを床から引き上げる『フルレンジ(床引き)』を基本動作とすることが多いのではないでしょうか。
一般的には
「通常のデッドリフト」= コンベンショナル(ナロースタンス)+ フルレンジ のことを指す場合が多い。
コンベンショナルデッドリフトは、デッドリフトの基本ともいえるスタイルで、可動域が広く、全身の筋力強化に非常に効果的です。
特に 脊柱起立筋・ハムストリングス・大臀筋 といった背面全体の筋肉に強い刺激が入ります。
初心者の方は、まずこの コンベンショナル(ナロースタンス)+フルレンジ のフォーム習得を目指すのがおすすめです。
🔴 バーベルデッドリフトのやり方(コンベンショナル・フルレンジ)
まずはバーベルデッドリフトの基本といえる、コンベンショナルデッドリフト(ナロースタンス)+フルレンジ のフォームの習得を目指しましょう。
スタートポジション(構え)
- 足を肩幅〜腰幅程度に開き、バーベルの前に立つ
足先は軽く外側へ向けると、股関節を使いやすくなります。 - 股関節と膝を曲げ、肩幅より少し広い手幅で、足の外側を握るようにしてバーを掴む
握り方には次の2種類があります
順手(オーバーハンドグリップ)
握力の強化や左右の均等性を重視したい人におすすめ。
互い違い(オルタネイト/ミックスグリップ)
高重量でもバーが回転しにくく、安定して持てるという利点があります。
※ 初心者はまず順手でフォーム習得 → 重量が伸びてきたらオルタネイトが一般的。 - 軽く胸を張り(過度に張らない)背筋を伸ばし前傾姿勢を作る
背中をフラットに保ったまま、肩甲骨を軽く下げて背中が丸まらない位置を作ります。
股関節を屈曲させてヒップヒンジの意識で構えます。
首と肩の力は抜き、「腕はバーにぶら下がっているだけ」のイメージでリラックスさせます。

バーベルを引き上げる(リフトアップ)
- 息を吸い、腹圧を高めて体幹を固定する
初心者や軽めの重量でフォームを習得する段階では、「引き上げ時に息を吐き、下ろす時に息を吸う」といった自然な呼吸で行うと血圧の急上昇を防ぎやすく安全です。
一方で、高重量を扱う場合は、一時的に息を止めて腹圧を維持する「バルサルバ法」が脊椎を守るうえで有効です。 - 前傾姿勢をキープしたまま膝を伸ばし、バーベルを引き上げていく
常に背筋をまっすぐ伸ばした状態を保ち、背中を丸めないように注意してください。
背中が丸まると腰椎に負担がかかりケガの原因になります。
また、バーベルは脛(すね)に沿うように身体の近くを通るように動かします。
※ バーが身体から離れると、腰の負担が大きくなります。

- バーベルが膝を超えたあたりから、上半身を起こしていく
背中(広背筋・脊椎起立筋)、お尻(大臀筋)・太もも裏(ハムストリングス)の力を使って上体を起こしていきます。
このときも 背中は丸めず、バーを太もも前面に添わせるように動かします。

- フィニッシュ(ロックアウト)で、お尻と背中を締める
肩甲骨を軽く寄せるように背中を締めると同時に、お尻〜もも裏を“グッ”と引き締めましょう。
※背中・腰の反らせ過ぎには注意しましょう。 - 動作の終わりで一呼吸入れ、ネガティヴフェーズ(下ろす局面)に備えて再び腹圧を高めます。

バーベルを下ろす
- 同じ軌道でバーベルをゆっくりと床へ下ろす
息を止め、腹圧を維持したままバーベルをコントロールしながらゆっくりと下ろすようにしましょう。
バーベルを下ろす際にも、背中は丸めずに伸ばした状態を保ち続けましょう。
デッドリフトのポイント
◆ コンベンショナルデッドリフト(ナロースタンス)におけるフルレンジのポイント
デッドリフトの動作は、効率的に力を伝えつつ安全に引き上げるため、大きく2つのフェーズに分けられます。
デッドリフトの動作を2段階に分ける理由
デッドリフトは大きく分けて 2つのフェーズ(膝下の動作と膝上の動作) によって構成されます。
バーベルを引き上げるときは、
① 膝の高さまではしっかりと前傾姿勢を維持しながら膝を伸ばしてバーベルを引き上げていく。
② 膝よりも高くなった辺りから上半身を起こしていく。

なぜこのような2段階の動きとなるのでしょうか?
簡潔にいえば、 ’’フォームを安定させ、安全に強い力を発揮するため’’ です。
引き上げの最初から上体を起こし始めるとどうなるか?
◆ 引き上げの最初から上体を起こし始めるとどうなる?
- バーベルの軌道がブレやすい
- 体の重心が後方へ流れやすい
- 背中が丸まりやすい
- フォームが不安定となる
結果
筋肉への負荷が分散し、非効率なトレーニングとなりやすい
腰椎への負担が大きくなりやすく、怪我リスクが高くなる
1. バーベルの軌道がブレやすくなる
膝関節の伸展よりバーベルの挙上が速くなるため、脛~膝に沿って前方に弧を描くような軌道になりがちです。

2. 体の重心が後方へ流れやすくなる
無理に軌道を直線に合わせようとすると、一度体の重心を後ろに引いてから引き上げていかなければなりません。

3. 背中が丸まりやすくなる(ヒップヒンジが崩れる)
バーが前に行く軌道もしくは体軸が後ろに流れようとする姿勢を修正するために、背中を丸めて対処しようとすることがあります。

4. フォームが不安定となる
そもそもフォームを安定させること自体が難しくなります。
上記の理由により
引き上げの最初から上体を起こし始めるとフォームが崩れて、
- 筋肉への負荷が分散し、非効率なトレーニングとなりやすい
- 腰椎への負担が大きくなりやすく、怪我リスクが高くなる
となります。
各フェーズによる筋肉の動き
◆ 第1段階(脛〜膝まで)

前傾姿勢を保ったまま膝の高さまでバーベルを引き上げます。
膝と股関節の両方を伸展して引き上げますが、前傾姿勢を残すため膝関節伸展の割合が大きくなります(膝関節伸展 > 股関節伸展)。
【筋肉の動き】
床から引く初動で、膝関節の伸展のために大腿四頭筋が働きます(収縮)。
ハムストリングは股関節より膝の伸展の割合が大きいため、前傾姿勢による強い張力を受けながらストレッチされていきます。
大臀筋も前傾姿勢を残すために強い張力を受けます。股関節伸展に関与するものの、膝関節主体の動きとなるため収縮は限定的なものとなります。
脊柱起立筋は背筋を伸ばした前傾姿勢を維持するために、強い等尺性(アイソメトリック)収縮が加わります。
◆ 第2段階(膝〜直立まで)

まだ膝を伸ばしきっていないため膝の伸展動作は終了していませんが、上体を起こしていくフェーズとなるため股関節伸展の割合が大きくなります(膝関節伸展 < 股関節伸展)。
【筋肉の動き】
まだ膝を伸ばしきっていないため、大腿四頭筋も働きますが、この段階では負荷は小さめとなります。
ハムストリングは、膝より股関節の伸展の割合が大きくなるため、ストレッチから収縮へと動きが切り替わります。
大臀筋は股関節の伸展のため、主導筋としてさらに強く働く(収縮する)ようになります。
脊柱起立筋は上体の引き上げ(前傾姿勢 ⇨ 直立)があるためさらに強い緊張が必要となりますが、直立に近くなるにつれてやや緊張は和らぐようになります。
■ ハーフデッドリフト(ラックプル)

ちなみに、この第2段階(膝〜直立まで)だけを行う種目がハーフデットリフト(ラックプル)です。股関節伸展中心の動作
動きの切り替えがなく、動作がシンプルになります。
さらに、フルレンジのデットリフトより高重量が扱いやすくなるため、バックライン(背中・お尻・もも裏)のトレーニングに集中したいときによく使われます。
デッドリフトは、同じフルレンジでもフォームによって効き方が大きく異なります。
たとえば、
- 前傾を深くすると → ハムストリングス・大臀筋への負荷が増える
- 膝をより使うフォームだと → 大腿四頭筋の寄与が増える
そのため、フェーズごとの基本構造は同じでも、「どの筋がより強く効いたと感じるか」はフォーム次第で変わります。
デッドリフトの握り方(グリップ)
デッドリフトの握り方には、大きく分けて「順手(オーバーハンドグリップ)」と「互い違い(オルタネイト/ミックスグリップ)」があり、順手は握力強化や左右均等性を重視、互い違いは高重量でもバーが回転せず安定して持てるという目的があります。
デッドリフトの握り方(グリップ)の種類と目的
1. 順手(オーバーハンドグリップ)
両手とも手の甲を前に向けて握る、最も基本的なグリップ。

- メリット
握力を直接鍛えられる(前腕の強化)。
左右差が出にくく、筋肉のバランスが保ちやすい。
フォームが安定しやすく、初心者に適している。
バーの軌道が素直でコントロールしやすい - デメリット
高重量になるとバーが回転して手から滑りやすい。
握力の限界が先に来てしまい、背中や脚の力を発揮し切れないことがある
順手(オーバーハンドグリップ)の派生 – フックグリップ(親指を巻き込む)
親指を先にバーに巻き込み、その上から指で押さえる握り方。

- メリット
素手でも指が外れにくく、普通に掴むより強力にホールドできる
重量挙げや一部のパワーリフターで一般的に使用される - デメリット
フックグリップに慣れないうちは親指に痛みが生じる
2. 互い違い(オルタネイト/ミックスグリップ)
片手を順手、もう片手を逆手で握る。

- メリット
バーベルの回転を防ぎ、高重量でも安定して保持できる。
握力の消耗を抑え、背中・お尻・もも裏のトレーニングに集中できる。
パワーリフティングや高重量のデッドリフトでよく使われる。 - デメリット
左右の前腕や肩などに負荷の偏りが出やすい。
長期的に同じ手の組み合わせで行うと、筋肉のアンバランスを招く可能性がある。
→ 左右を定期的に入れ替えることが推奨される。
握り方(グリップ)の比較表
| グリップ方法 | メリット | デメリット | 適した場面 |
|---|---|---|---|
| 順手(オーバーハンド) | 握力強化、左右均等、初心者向け | 高重量で滑りやすい | 軽〜中重量、フォーム習得、握力強化 |
| 順手 ※フックグリップ | 順手より滑らない、高重量に耐えやすい | 親指が痛い、慣れが必要 | 重量アップ後も順手で続けたい場合 |
| 互い違い(オルタネイト/ミックス) | 高重量でも安定、握力消耗を抑える | 左右差が出やすい | 高重量デッド/パワーリフティング |
握り方(グリップ)についての補足
初心者に対してのおすすめとしては、
①最初は順手(オーバーハンド)でフォーム習得 & 握力強化
デッドリフトの基本は順手。
握力も自然に鍛えられて一石二鳥。
②重量が伸びてきたら → 順手+補助具(ストラップ or パワーグリップ)
フォームを崩さずに背中に集中しやすくなります。
③ どうしても素手にこだわりたい → フックグリップ or オルタネイト
本格的に重量を追いたい → オルタネイト
(※左右は必ずローテーション)
素手で順手を続けたい → フックグリップ
バーベルデッドリフトの注意点
1. 動作中は背筋をまっすぐ保つ(背中を丸めない)
特に注意したいのが「背中が丸まってしまうフォーム」です。
動作中に背中や腰が曲がってしまうと、トレーニング効果が落ちるだけでなく、脊椎に大きな負担がかかり、腰痛やケガの原因となります。
(背中や腰が曲がったフォーム = ケガにつながる危険なフォーム)
背筋をまっすぐ保つことは、脊椎のケガを防ぎつつ、より適切に股関節の伸展でパワーを発揮するためにも重要なポイントです。
スタートポジションの段階でしっかり姿勢を作っておきましょう。
胸を軽く張り(過度に張らない)、背中をフラットな状態に維持したまま、股関節から体を倒す(ヒップヒンジ)意識でスタートポジションを作ります。
動作中は、常に背筋をまっすぐにした(背中を丸めない)状態をキープすることで、股関節伸展によるパワーを正しく発揮し、安全にデッドリフトができます。

2. 膝の高さまでは前傾姿勢を維持し、膝よりも高くなった辺りから上半身を起こす
デッドリフトの基本動作は 2つのフェーズ に分かれています。
膝の高さまではしっかりと前傾姿勢を維持しながら膝関節主体でバーベルを引き上げていきます。
膝よりも高くなった辺りから上半身を起こし、股関節伸展を強めていきます。
この動作の切り替えが重要なのは、バーベルの軌道が安定し、フォームがブレにくくなるためです。
(詳細は前項で説明済みのため、ここでは簡潔にしています。)

3. 使用する筋肉を意識して動作を行う
バーを引き上げる際は、ハムストリングス・大臀筋・脊柱起立筋といった主に身体の後面の筋肉を使って持ち上げます。
使用する筋肉を意識することで、その筋肉の動員が高まり、トレーニング効率も向上します。
このように、狙った筋肉の収縮や伸長を意識しながら動作を行うことを「マインド・マッスル・コネクション(mind-muscle connection)」と言います。
デッドリフト中は、これらのターゲット筋にしっかり負荷が乗っているかを確認しながら動作を行いましょう。
4. 余分な力を抜く(力み過ぎない)
デッドリフトでは、首・腕・肩などに余計な力が入るとフォームが崩れ、本来ターゲットとなる筋肉に負荷がかかりにくくなります。
腕は “バーを握るためのフック” 程度の意識にして、腕、首・肩まわりの力は極力抜き、肘を曲げない・肩をすくめない ようにしましょう。
不要な力みをなくし、広背筋を使ってバーを安定させ動作を行うことで、下半身と体幹の力を効率よく発揮できるようになります。
ある程度重量が重くなってきたら、リストストラップ や パワーグリップ を利用すると、握りこみによる力みも軽減でき、動作に集中しやすくなります。

5. バーベルを身体から離さない(身体に沿ってバーベルを引き上げる)
デッドリフトでは、バーベルが身体から離れてしまうと重心が前にズレてフォームが不安定となり、腰椎にかかるモーメントアーム(てこの負荷となる距離)が大きくなり、腰への負担が急増します。
バーベルをできるだけ身体の近くに保つことで、効率よく力を伝えられ、正しい軌道で安全に動作を行えます。
バーは常にすね〜太ももに軽く触れる程度の距離で、身体に沿わせるように引き上げるようにしましょう。

6. 構えの段階で腰を落としすぎない
デッドリフトのセットポジションで腰を落としすぎると、デッドリフト本来の効果を十分に引き出せないためおすすめできません。
しゃがみ込みすぎてスクワットのような姿勢になると、股関節主導の動きができず、ハムストリング・大臀筋・脊柱起立筋といった背面の筋肉でバーを引き上げる力が発揮しにくくなります。
理想の構えは、股関節をしっかり折り込んだ「ヒップヒンジ」の姿勢です。

7. フィニッシュは肩甲骨を軽く内側に寄せる(背中の筋肉を意識する)
デッドリフトのフィニッシュでは、肩甲骨を軽く内側に寄せて背中の筋肉をしっかり使うようにすると、僧帽筋・広背筋・菱形筋などの関与が高まり効果的です。
ただし、肩を過度にすくめたり強く寄せすぎたりすると首や肩に余計な負担がかかるため、あくまでも背中の筋肉を締める程度の自然なリトラクションを意識しましょう。
狙う部位に応じた肩甲骨の使い方(デッドリフトのフィニッシュでの意識)
鍛えたい部位に応じて、肩甲骨の動かし方を少し変えることで、より狙った筋肉に刺激を入れやすくなります。
・背中上部(僧帽筋上部・肩甲挙筋 など)を狙う場合
肩甲骨をやや「上後方」へ引き上げるイメージ(挙上+軽い内転)
・背中中部(僧帽筋中部・菱形筋 など)を狙う場合
肩甲骨を「後方中央」へ真っすぐ寄せる(内転)
・背中下部(僧帽筋下部・広背筋 など)を狙う場合
肩甲骨を「下後方」へ引き下げて寄せる(下制+内転)


このように肩甲骨の方向をわずかに変えることで、
フィニッシュで特定の部位に意識を向けやすくなります。
デッドリフトのフィニッシュで背中の筋肉を締めることは有効ですが、デッドリフトは脊柱起立筋・大臀筋・ハムストリングを中心とした “全身のコンパウンド種目” です。
背中の特定部位を重点的に鍛えたい場合は、以下のような専門種目を組み合わせることで、より効率よく発達させることができます。
- 僧帽筋上部
シュラッグ など - 僧帽筋中部
ダンベルワンハンドロー、ベントオーバーロウ、フェイスプル など - 広背筋
チンニング(懸垂)、ラットプルダウン、ワンハンドロー、ベントオーバーロウ、プルオーバー など
つまり、デッドリフトの中で “背中を意識する” のは非常に良いことですが、背中全体をまんべんなく鍛えるためにはデッドリフト1種目で全てを補おうとせず、他の種目とうまく組み合わせるのが理想的です。
8. フィニッシュ時に腰を反らせすぎない
フィニッシュ時に、バーを引き切ろうとして腰を大きく反らせたり、重心を後ろに移動させる動作は避けましょう。
過度な腰の伸展は、腰椎へ強い負担がかかりケガのリスクが高くなります。
特に「背中やお尻にもっと効かせたい!」という意識が強いと、つい腰を反らせすぎてしまうことがあります。
無理に反らさず、フィニッシュでは自然な姿勢で肩甲骨を軽く寄せるように、そしてお尻からもも裏に関しても筋肉を ”グッ’’ と締める感覚でロックアウトを行いましょう。
無理な伸展ではなく、背中・お尻を締める感覚を優先しましょう。

9. 呼吸と腹圧のコントロール
デッドリフトでは、呼吸と腹圧のコントロールがフォームの安定性に直結します。
腹圧をしっかり高めることで体幹が固まり、腰や背中を安全に保つことができます。
■ デッドリフトの基本的な呼吸の流れ
- 動作前に深く息を吸う(吸気)
お腹に空気を入れるように吸い込み、腹圧をかける準備をします。 - 息を止めて腹圧をかける(力を入れる)
吸った息を止めたまま腹を膨らませるようにして体幹を固定します。 - 息を止めたままバーベルを引き上げる(バルサルバ法)
腰を守るため、腹圧をキープしたままバーベルを引き上げます。 - トップで一瞬静止(呼吸は状況に応じて)
必要に応じて、このタイミングで一呼吸入れることもできます。
一方で、下ろす(一動作終わる)まで息を止めたまま行うこともできます。
特に高重量を扱う場合は、腹圧を維持するためにトップの位置でも呼吸を止め、腹圧を保ったまま下ろすケースも多く見られます。 - バーベルを下ろし終わったら息を吐く
バーベルを下ろした後に息を吐き、再び次の動作に備えましょう(1~4を繰り返す)。
■ 軽めの重量で行う場合の呼吸パターン(初心者はまずここから始める)
例えば、初心者がフォーム習得時のために行うとき、メインセットに入る前のウォーミングアップ、引き締め目的などで低負荷・高回数設定で行うときなどは、『上げるときに息を吐き、下ろすときに吸う(呼吸を止めない)』でも大丈夫です。
むしろ、呼吸を止めないことによって、血圧の上昇や酸欠などのリスクを抑えることができます。
ただし、呼吸を続けながらも可能な限りお腹に力を入れて体幹を固定するようにしましょう。
■ 注意点(重要)
息を止める ”バルサルバ法” は血圧が一時的に上がりやすいため、心臓や血管に不安がある方にとっては注意が必要です。
また、呼吸を止めすぎると、酸欠やめまいや立ちくらみの原因になることもあります。
セットの合間には、呼吸を整える時間をとるようにしましょう。
10. 下ろすときはゆっくりコントロールする
デッドリフトでは、バーベルを握ったまま急に力を抜いて落とすように下ろすのは危険です。
引き上げる局面だけでなく、下ろす局面(ネガティブ動作)でも筋肉に強い刺激が入るため、フォームを保ちながら丁寧に下ろすことが大切です。
筋肉でブレーキをかけるイメージで、ゆっくりコントロールしながら下ろすことで、安全性が高まり、トレーニング効果も向上します。
11. 適切なインターバル設定を行う
バーベルデッドリフトは、背中や下半身を中心に全身を大きく使うトレーニングです。
特に高重量を扱う場合、筋肉だけでなく心肺機能への負担も大きくなります。
疲労が蓄積しやすく、筋力トレーニングの中でも回復にやや時間がかかる傾向があります。
体が冷えない程度にインターバルはやや長めにとるようにすると、疲労によるパフォーマンスの低下を防ぐだけでなく、フォームの崩れによるケガの予防にもなります。
目安としては3分程度、疲労度によってはもう少し長めに休んでも問題ありません。
(引き締め目的などで比較的軽い重量で行う場合は、短めでもOKです。)
少なくとも、乱れている呼吸が整う程度のインターバルは確保すると良いでしょう。
12. デッドリフトの「止め時」(フォームが崩れたら終了)
デッドリフトでは、たとえ目標の回数に届いていなくても、腰や背中が曲がり始めた時点で、そのセットは終了することを強くおすすめします。
例えば、「10回を目標としていたが、7~8回目で疲労のため背中が丸まりはじめた。頑張れば10回は何とかできそう!」という場面でも、フォームが崩れた時点があなたの限界だと考えましょう。
背中が丸まった状態で続けると、腰への負担が急増し、ぎっくり腰や椎間板ヘルニアなどのケガのリスクが高まります。
安全かつ効果的にトレーニングするためには、正しいフォームでできる範囲でセットを終えることが重要です。
フォームを保ちながら回数をこなすことで、トレーニング効果を最大化させることができます。
デッドリフトにおすすめの道具
1. リストストラップ / パワーグリップ
デッドリフトでは、リストストラップやパワーグリップを使うことで、より効率的かつ安全にトレーニングを行うことができます。
素手で高重量のデッドリフトを行う場合、背中の追い込みが不十分な状態で先に握力がなくなってしまうことがあります。
また、手のひら(皮膚)にも相当の負担がかかります。
リストストラップやパワーグリップを使用することで、手のひらのダメージや前腕の疲労を軽減し、背中の筋肉を追い込む前に握力がなくなるのを防いでくれます。
さらに、前腕の力みや疲労を気にしなくていい分、背中のトレーニングに集中することができます。
また、デッドリフトだけでなく、ベントオーバーロー、ラットプルダウン、懸垂(チンニング)など多くの背中の種目でも活用できるため、背中トレーニング全般において非常に便利なアイテムです。
私個人の感想としては、パワーグリップのほうが着脱が簡単で扱いやすく、懸垂やラットプルダウンとの相性も良いため、背中を鍛える際の必須アイテムになっています。
2. トレーニングベルト
バーベルデッドリフトは非常に高重量を扱うこともできるため、正しいフォームと腹圧のコントロールが非常に重要です。
しかし、重量が増えるにつれて自力で十分な腹圧を保つのが難しくなる場面も出てきます。
そんなときに役立つのが、トレーニングベルトです。
トレーニングベルトは、「腹圧を高め、それを逃がさないようにして体幹を安定させるサポートギア」です。
動作前に息を吸い、腹筋に力を入れてお腹をベルトに押し当てるように腹圧をかけることで、体幹が安定し、腰のケガ予防にもつながります。
- 腹圧をかけやすくなり、腰が安定する
- 背骨(特に腰椎)のケガ予防につながる
- 重い重量でもフォームが崩れにくくなる
トレーニングベルトは、自前で持っていなくてもジムで準備されていることが多いので、用意されている場合は積極的に活用しましょう。
■ トレーニングベルトの使い方のポイント
- 動作前に腹圧をかけるタイミングで、お腹をベルトに押し当てるように力を入れる
- ベルトに頼りすぎず、腹筋で体幹を支える意識も持つ
- 軽い重量・フォーム練習時には必ずしも使用する必要はない
■ トレーニングベルトを使う際の注意点
- トレーニングベルトはあくまでも “補助”
トレーニングベルトを着けると腰が安定しやすく、力も入れやすくなりますが、
ベルトが腹圧を作ってくれるわけではありません。
腹圧は本来、横隔膜・腹筋群など “自分の筋力” で作り出すものです。
ベルトは、その圧力を体の外側から逃がさないように支えてくれる “壁” のような役割を果たします。
そのため大切なのは、①自分の力で腹圧をかける → ②ベルトでその圧力を固定するという順番です。
「ベルトをつけているから安心」ではなく、まずは正しい腹圧のかけ方とフォームを身につけたうえで補助的に使うことを心がけましょう。 - トレーニング中のみ着用し、インターバル中は緩める
トレーニングベルトは、高い腹圧を維持するためのアイテムです。
そのため、使用するのは基本的にはセット中だけです。
1セット終わるごとに、速やかにベルトを緩めて腹圧を開放するようにしましょう。
ベルトを締めたまま休憩していると、内臓や呼吸への不要な圧迫になる可能性があります。
3. ニースリーブ(膝サポーター)
デッドリフトでは腰への負荷が注目されがちですが、実は膝にも少なからずストレスがかかります。
そこで役立つのが ニースリーブ(膝サポーター) です。
ニースリーブを着用することで、膝関節を適度に圧迫し、動き(安定性の向上)をサポートしてくれます。
膝のぐらつきを抑えながら動きやすさが高まるため、安心してトレーニングに集中できるようになります。
まとめ
デッドリフトは、背中やお尻や太もも裏をしっかり鍛えられる、筋トレ中~上級者のみならず、初心者にとっても非常に優秀な種目です。
正しいフォーム・呼吸・腹圧を意識することで、ケガを防ぎながら最大限の効果を引き出せます。
初心者は軽めの重量から、焦らずじっくりフォームを固めていきましょう。
一歩ずつ正しく積み重ねることで、ケガを予防しながら効率よく筋力アップが目指せます。
安全にトレーニングを継続して、理想の身体づくりを進めていきましょう!

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