ブランク後でも短期間で筋肉を取り戻せる仕組みと注意点を解説
就職や転職、仕事が忙しくなった、出産・育児、家庭の事情、病気や怪我など、長期にわたってしばらくトレーニングから離れることもあるかもしれません。
一段落してトレーニングを再開しようと思った頃には、かなり時間が経っていて、筋肉もずいぶん落ちてしまっていた。
今さら、一からやり直す気力もない。
そうして、トレーニングからフェードアウトしてしまうケースは少なくありません。
しかし、一度鍛えた経験がある人は、トレーニングを再開すれば筋力を取り戻すまでの時間は比較的短いものです。
それは身体が鍛えていた頃の状態を覚えているからといわれており、その機能は俗に「マッスルメモリー(筋肉の記憶)」と呼ばれています。
今回は、トレーニング経験のある人なら一度は聞いたことがある「マッスルメモリー」について、その仕組み
と注意点について初心者の方向けに解説していきます。
マッスルメモリーとは?
マッスルメモリーとは、過去の継続的なトレーニングで獲得した筋肉の状態が「記憶」され、ブランクで筋力や筋肉量が低下しても、再トレーニングにより比較的短期間で以前の状態に戻りやすくなる現象のことを指します。
この現象は筋肉に限らず、運動神経・関節・骨・心肺機能など含めて同様のことがいえ、一度身につけた動作や鍛えた部位は、再度トレーニングを行えば初心者に比べて格段に速いスピードで上達・強化されます。
マッスルメモリーが起きる理由
骨格筋の作られる過程は筋芽細胞が融合して合胞体と呼ばれる多核細胞となり筋線維を形成します。
マッスルメモリーは、筋肉の中にある細胞核(筋核)が関係しています。

具体的に説明すると、筋肉が太く発達するためには、筋線維を大きくしていかなければいけません。
骨格筋細胞は多核化している唯一の筋細胞なのですが、1つの細胞核による筋細胞の体積保持(核領域)には限度があり、ある程度まで体積が大きくなると、それ以上の肥大はできなくなります。
そのため、筋肉がさらに太くなるためには、筋核の数を増やす必要があります。
筋力トレーニングを行い筋肥大すると、同じ筋核の数では一定の太さで限界の体積に達します。
そこから、さらに高強度の筋力トレーニングを続けることで、さらなる筋肥大に対応するために筋核が増加します。
筋核が多いほど筋線維が保持できる体積が大きくなるため、より大きな筋肥大が可能になります。
興味深いことに、一度トレーニングによって増えた筋核は、トレーニングを中断して筋肉量が減少しても、長期間筋線維内に残ると示唆されています。
このため、ブランクがあったとしてもトレーニングを再開すれば、残っていた筋核が再び活性化され、以前の筋肉量に比較的早く戻ることができると考えられています。
これがマッスルメモリーのメカニズムであり、筋肉が「記憶」すると言われる所以となっています。
マッスルメモリーが起きる主な理由は以下の3つ
① 筋核が残るため
筋トレで筋肉が成長すると「筋核」が増えます。
トレーニングをやめても筋核はすぐには減りません。
そのため再開すると素早く筋肉が成長します。
② 神経系が覚えているため
筋トレは筋肉だけでなく神経も発達します。
フォーム・力の入れ方・動作の安定性、これらが体に記憶されているため、再開後すぐに扱える重量が戻ります。
③ 筋肥大への適応力が高いため
過去に筋肥大した経験があると、タンパク質合成能力・回復能力・筋肥大の適応力が高い状態になると考えられます。
マッスルメモリー獲得の条件
筋力トレーニングを行い一定の太さまで筋肥大した後に、さらに高強度の筋力トレーニングを続けることで、筋核が増加します。
つまり、マッスルメモリーの効果を得るには、一定期間の継続的なトレーニングを行っていたという経験が必要となります。
まだ、その一定期間の詳しい研究結果は出ていないようですが、最近筋トレをはじめた人は、まず1年間を目標に続けるとよのではないでしょうか。
また、マッスルメモリーを記憶させる(筋肉がついていた状態を覚えさせる)には、若いうちが有利です。
筋肉の合成を促進させるテストステロンは、個人差はあるものの10代後半〜20代前半でピークとなり、その後は加齢とともに減少していきます。
つまり、加齢とともにマッスルメモリーを記憶させる段階として不利になっていきます。
若いうちにしっかり鍛えておくことで、生涯の財産とすることができます。
一定期間の継続的な高強度トレーニングで筋核を増やすことが、マッスルメモリー獲得の条件。
特にテストステロンが高い若いうち(10代後半〜20代前半)に筋肥大を経験しておくと有利。
マッスルメモリーはどのくらいの期間持続するのか?
トレーニングによって一度鍛えられた筋肉の状態は、長期間記憶されるとされていますが、その効果がどれくらい続くのかについては、まだ統一された研究結果は出ていません。
数年程度とするものから、10年程度、それ以上、あるいは生涯にわたるとする説まで様々です。
個人差もあるのかもしれません。
あくまで私の体験談となりますが、私は15年ほどのブランクを経てトレーニングを再開した経験があります。
その際、体感的にマッスルメモリーの効果を感じました。
トレーニングの知識や方法、コツをある程度理解している影響もあるかもしれませんが、体感としては少なくとも10年以上は維持されているように感じます。
とはいえ、ブランクが長期間になればなるほど、効果が低減する可能性もあります。
復帰するのであれば、ブランクはなるべく短いほうがよいでしょう。
マッスルメモリーを活かすための注意点
マッスルメモリーを最大限に活かすためには、いくつかのポイントがあります。
ここでは以下の2つのフェーズに分けて解説します。
マッスルメモリーを記憶させるフェーズ
1. 継続的なトレーニングを行う
2. 筋肥大を目的とした高強度トレーニングを行う
3. 若い時期に鍛えておくほうが有利
マッスルメモリーを使う(トレーニングを再開する)フェーズ
1. 筋力・体力の低下を自覚する(最初から無理しない)
2. 筋肥大を目的とした高強度トレーニングを行う
3. ケガへの注意
4. 休養期間の確保(最初はトレーニング頻度を抑える)
5. ストレッチを行う
6. 十分な睡眠と栄養をとる
マッスルメモリーを記憶させるフェーズ
マッスルメモリーを記憶させるためには、まずトレーニングをしっかり行い、筋核を増やす必要があります。
トレーニングによって筋核が増えた状態が、マッスルメモリーの土台となります。
1. 継続的なトレーニングを行う
マッスルメモリーを形成するためには、一定期間の継続的なトレーニングが必要です。
どれくらいの期間トレーニングを行えばマッスルメモリーが記憶されるのかについては、明確な期間についてまだ統一された見解はありません。
しかし、ひとつの目安としては、1年以上継続してトレーニングを行うことが勧められています。
特に筋肥大を伴うトレーニングを継続することで、筋核の増加が起こり、マッスルメモリーが形成されやすくなります。
2. 筋肥大を目的とした高強度トレーニングを行う
マッスルメモリーを強く残すためには、「筋肉がしっかり大きくなるまで鍛えること」が、重要なポイントになります。
筋核は、筋肥大が進んだ状態でさらにトレーニングを重ねることで増えていきます。
そのため、単にトレーニングを継続するだけでなく、筋肥大を伴うトレーニングを行う必要があります。
回数だけ多い軽い負荷のトレーニングや、負荷の低い運動では筋肥大が起こりにくく、筋核の増加も期待しにくくなります。
しっかりと負荷をかけ、筋肉に十分な刺激を与えて筋肥大を起こすことで、より強いマッスルメモリーが形成されます。
筋肥大を目的とする場合は、一般的に8〜12回程度で限界となる負荷を用い、セット数を重ねてトレーニングボリュームを増やしていくことが効果的とされています。
このように筋肥大を意識したトレーニングを継続することが、筋核の増加につながります。
十分に筋肥大を経験した人ほど、マッスルメモリーの効果をより感じやすくなります。
3. 若い時期に鍛えておくほうが有利
筋肉をつけやすい若い時期にしっかりと筋トレを行い、筋核を増やしておくと、マッスルメモリーの効果を実感しやすくなります。
特に成長期から若年期にかけては筋肉の発達が起こりやすく、この時期に筋肥大を経験しておくことは、その後のトレーニング再開時にも有利に働く可能性があります。
マッスルメモリーを使う(トレーニングを再開する)フェーズ
以下のポイントを意識してトレーニングを行うことで、マッスルメモリーを活かし、効率的に筋肉を取り戻すことができます。
1. 筋力・体力の低下を自覚する(最初から無理しない)
ブランク明けは、筋力・体力が落ちているのは当然のことです。
最盛期のときのイメージでトレーニングを再開してしまうと、ケガにつながる可能性が高くなります。
トレーニングを始める前に、まずは筋力・体力が低下した状態にあることを理解し、以前の自身とは異なることを自覚して、慎重にトレーニングを行うようにしましょう。
2. 段階的に負荷を強くする(低重量から始める)
トレーニングを再開する際は、まず現時点の筋力を把握するためにも、低い強度から始めるようにしましょう。
最初から筋肉への過度な追い込みは避けることが重要です。
身体を慣れさせながら、筋肉が過去に経験した負荷に適応していくよう、段階的に強度を上げていきましょう。
焦りは禁物です。
3. ケガへの注意
マッスルメモリーを実感できる方は、過去に一定期間のトレーニングを経験している方が多いと思います。
しかし、ブランク明けはケガのリスクが高くなるため、あらためてフォームには注意が必要です。
正しいフォームを心がけ、関節に無理をかけない範囲で可動域を広く取るようにしましょう。
フォームの乱れはトレーニング効果の低下だけでなく、ケガのリスクを高めることにもつながります。
トレーニングマシンやスミスマシンのように、軌道の固定された種目から始めるのもケガを防ぐ方法のひとつです。
フリーウエイト種目の場合は、左右それぞれのバランスを取る必要があるダンベルよりも、前後左右のバランスを保ちやすいバーベル種目から始めるほうがよい場合もあります。
いずれにしてもケガを防ぐためには、まず軽い重量から始め、無理のない範囲で行うことが重要です。
4. 休養期間の確保(最初はトレーニング頻度を抑える)
ブランク明けは、予想以上に筋力が落ちている場合があります。
そのため、回復にも時間がかかることが考えられます。
まずは週2〜3回を目安に始め、十分な回復期間を確保するようにしましょう。
また、幅広く筋肉に刺激を加えられる全身法を用い、コンパウンド種目(多関節運動)を中心にトレーニングを再開することがおすすめです。
全身法でトレーニングを行うことで、一部の筋肉に過度な負荷が集中するのを防ぎ、少ない頻度でも全身にバランスよく刺激を加えやすくなります。
徐々に強度・頻度を上げていきましょう。
5. ストレッチを行う
ブランク明けは筋肉も固くなっている可能性が高いです。
柔軟性が失われた状態では、トレーニングで可動域を十分に使えないばかりか、ケガのリスクも高まります。
せっかくトレーニングを再開しても、ケガをしてしまっては、さらにブランクを長引かせることにもなりかねません。
いつも以上にストレッチを丁寧に行い、筋肉の柔軟性を確保しましょう。
特に、トレーニング前の動的ストレッチと、トレーニング後や入浴後の静的ストレッチが効果的です。
6. 十分な睡眠と栄養をとる
久しぶりのトレーニングは疲労も大きく、回復にも時間がかかります。
十分な睡眠と栄養をとり、体をしっかり回復させることが重要です。
回復が不十分なままトレーニングを続けると、パフォーマンスの低下やケガのリスクにつながる可能性があります。
体調を整えながら、無理のないペースでトレーニングを継続していきましょう。
まとめ
マッスルメモリーとは、一度鍛えた経験があればブランクがあってもトレーニングを再開すれば短期間で発達する現象のことです。
これは主に以下の3つの理由によって起こると考えられています。
・筋核が残る
・神経が覚えている
・筋肥大への適応力が高い
一度鍛えた肉体は、生涯の財産になります。
トレーニングを始めて間もない方も、マッスルメモリーという現象を知っておくだけで、筋トレを続ける励みになるのではないでしょうか。
まずは1年間を目標に、コツコツと続けてみましょう。
また、ブランク明けの方やこれから復帰する方も、焦る必要はありません。
筋トレの中断は誰にでも起こり得るものです。
トレーニングを再開すれば筋肉は比較的早く戻ってきます。
大切なのは、ブランク後のトレーニングへの向き合い方です。
無理をせず、落ち着いて筋肉を取り戻していきましょう。


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